00192_「若いころの、破滅に至らない程度の、失敗経験」の重要性

人生の成功と失敗を決める鍵は、若い頃の
「ある経験」
にあります。

成功者と犯罪者

罪を犯す人には、大きく分けて2つのタイプがあるとされています。

1つは
「根っからの犯罪者」。

生まれつき悪事を行うことに罪悪感を持たない、稀な存在です。

もう1つは、
「非常に真面目で、思いつめやすく、自分の期待や理想と異なる現実や他人の考えを受け入れるのが苦手な人々」
です。

後者のタイプが圧倒的に多いです。

このタイプの人々は、非常に真面目であるが、プレッシャーに弱く、固執する性格です。

ルールや相場観を知識・情報として理解できても、自分の考えと衝突する内容は、耳に入りません。

その結果、自分の
「正義」
を優先するあまり、法を超える行動に至る場合があります。

実は、このタイプは、成功する人間も多いのです。

成功者と犯罪者をわける「分水嶺」

犯罪者と成功者は、紙一重です。

その分水嶺は何だと思いますか。

犯罪者と成功者を分けるのは、
「若いころの、破滅に至らない程度の、失敗経験」
です。

この失敗経験こそが、成功へと導く鍵となります。

若い頃の失敗が成長を導く

受験でも恋愛でも、人間関係でも、どの分野でも何でもいいのです。

自分の想定とは違う現実を突きつけられ、
「自分の希望や理想や妄想がいつも願いどおり叶えられるというわけではない」
ということを、頭で理解するのではなく、実感として心の奥底から体得することです。

自分の理想や信念だけで突き進むのではなく、失敗をとおして現実を受け入れる力を身に付け、現実と折り合いをつけながら生きる力が培われていきます。

破滅に至らない程度の失敗であれば、それが学びとなり、柔軟さと現実対応力を養うきっかけになります。

破滅に至るような失敗をすると、立ち直れなくなります。

失敗を避けた人生の危険性

逆に、若い頃に大きな失敗を経験せず、すべてが順調に進んだ場合、どのようなリスクがあるでしょうか。

それは、年を取ってから、重要な場面で想定外の失敗に直面したときに表れます。

失敗に慣れていない人は、次のようなミスを犯す可能性があります。

・世間やルール、相場観を誤解する
・状況を見誤る
・保険をかけ忘れたり、予備の計画を持たずに危険で冒険的な決断をする
・撤退や方向転換のタイミングを誤る

こうした判断ミスは、時として大きな失敗を引き起こします。

そして、その失敗を無理に取り戻そうとするあまり、法を犯したり他者に迷惑をかけたりすることになり、その結果、財産や信用や人間関係を含め、人生にとって重要なものを“すべて失う”危険にさらされるのです。

強く生き抜くために必要な視点

自分が間違うことも計算に入れておきましょう。

「最善を目指しつつも、冷静に最悪のシナリオを想定する」
このバランス感覚が、しなやかで強い人間を育てるのです。

犯罪者と成功者を分ける紙一重の違い。

それは、
「若いころの、破滅に至らない程度の、失敗経験」
なのです。

失敗経験は、豊かな才能と大きなエネルギーを有する若者を成功者に導きます。

若い頃に失敗を経験し、それを乗り越える中で現実の厳しさと自分の限界を学ぶことで、有能で、タフで、しぶとく生き残る、本当に強靭な人間に成長できるのです。

著:畑中鐵丸

00191_ケーススタディ_離婚調停中、別居の親子関係を考える:子どもの言葉の真意を探る

<事例/質問>

先日、息子との面会交流が無事に終わりました。

久しぶりに会えたのは嬉しかったのですが、息子と話している中で、娘について気になることを聞きました。

息子曰く、
「妹は、パパとは会いたくない、と話してる」
そうです。

「会いたい」
と言ったり、
「会いたくない」
と言ったりしているそうで、娘の本音がどこにあるのかわからず、悩んでいます。

また、最近の面会交流は、子どもを引き取っている相手側のルールに従う必要があり、その状況に少なからず不満を感じています。

良くも悪くも早く決着をつけたいです。

相手側の思惑に左右されずに娘とちゃんと向き合える親子関係を築くためには、娘の発言をどのように受け止め、また、面会交流においてもどのように対応していけばよいのか、アドバイスをいただければと思います。

<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>

面会交流、お疲れさまでした。

限られた時間の中で、たとえ手間がかかると感じても、
「会うための最大限の努力を、可能な限り尽くしている」
という否定できない事実の蓄積は重要です。

お嬢さんの
「会いたくない」
という発言についてですが、この言葉をそのまま真に受けるのではなく、背景にどのような影響があるかを考慮することが重要です。

具体的には、以下の要素を頭に入れておきましょう。

1 伝聞である点

息子さんから聞いた内容であり、必ずしもお嬢さん本人の真意を直接表しているとは限りません。

2 バイアスの存在

子ども自身の気分や感情、あるいは現在の家庭環境からの影響によって、言葉が歪んでいる可能性があります。

3 別居中の配偶者の誘導

お嬢さんの発言が、意識的または無意識的に配偶者からの影響を受けていることも考えられます。

これらの要因を考慮すれば、お嬢さんの
「会いたくない」
という発言も、表面的なものに過ぎない場合があります。

過剰に反応せず、
「そのような時期もある」
と受け止める姿勢が重要です。

逆に、配偶者がバイアスをかけるのは
「焦り」
の現れともいえます。

たとえば、戦争で劣勢になったかつての日本や、現代の北朝鮮が、滅亡に近づくにつれて強気の姿勢や誇張した情報を発信することと似ています。

この種のバイアスに右往左往せず、振り回されないことが肝要です。

あなたが
「良くも悪くも早く決着をつけたい」
と感じる点については、十分に理解できます。

ただし、今は冷静に構え、引き続き淡々と面会交流を続けることをお勧めします。

「会いたくない」
という言葉に過剰な意味を見出さないようにしましょう。

時間の経過とともに、お嬢さんの心情や態度も変化する可能性があります。

焦らず、長期的な視点で接していくことを心がけてください。

著:畑中鐵丸

00190_メールか会話か_状況別で考える伝え方のコツ

メールは日常業務の中でとても便利なツールです。

しかし、これは一見
「早くて、手軽で、証拠にもなる」
という利点を備えていながら、微妙なニュアンスや空気感までは伝わらないという限界も抱えています。

たとえば、電子メールはレシピ本のようなものです。

料理の手順や材料は細かく書かれていますが、実際にどんな味になるか、香りや食感などは作ってみるまでわかりません。

同様に、メールの文章が示す
「意思」
は相手に伝わるものの、それが
「どういう意図か」
「どんな感情を持っているか」
といった細かなニュアンスまでは伝えきれないのです。

直接会ったり、声を聞いたりしてこそ感じ取れる
「その場の空気感」
は、メールではどうしても伝わりにくくなります。

逆に、意図的に
「伝えすぎたくない」
ときにはメールが有効な手段です。

たとえば、少し曖昧にしておきたい情報や、言い過ぎると後から困る内容を控えめに伝えるには、メールが適しています。

直接の会話であれば、思わずポロっと本音が漏れてしまうこともありますが、メールであれば文を推敲しながら書けるため、伝えすぎを防ぐことができるからです。

また、メールは
「証拠として残す」
ためにも非常に有用です。

ある取引先と交渉する際、口頭でのやり取りは記録に残りませんが、メールで
「先日お話しした件については、〇〇の方針で進めます」
と一文残しておけば、後から
「当時はそういう合意だった」
という証拠になります。

こうした記録は、いざというときに自分を守るために非常に役立ちます。

ただし、どうしてもメールに馴染まない情報というものもあります。

たとえば、複雑なニュアンスを持つ依頼や、相手がどう受け取るか気になるデリケートな話題では、電話や面談が適しています。

これらは、メールという
「簡便さ」
はないものの、相手の表情や声の調子から、伝えたいことを調整しやすいからです。

メールは
「証拠や形を残したいときの武器」、
一方で、直接の対話は
「行間や空気感を伝えたいときの武器」
として、それぞれをうまく使い分けることが大切です。

著:畑中鐵丸

00189_ケーススタディ_中学受験を目前に、親が心がけるべき「平静心」のマインドセット

<事例/質問>

中学受験まであと2カ月弱です。
家の中はピリピリしております。
親として、どのように過ごしたらよいでしょう。

<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>

中学受験が目前に迫り、家の中がピリピリとした雰囲気に包まれるのは自然なことです。

ですが、こうした時期にこそ親が冷静なマインドセットを保つことで、子どもが受験当日に最高の力を発揮できる環境が整います。

以下の心構えを念頭に置いて、親としてどう振る舞うべきかを考えてみましょう。

1 合格は「目標」ではなく「結果」

受験生が目指すべきは
「合格」
という結果を手に入れることではありません。

受験生がするべきことは、これまで準備してきたことを出し切り、最高のパフォーマンスをすることです。

なぜなら、合否を決めるのは学校であり、受験生が全力を尽くしても、結果を変えることはできません。

「合格しなければ」
と捉えてしまうと、
「自分では制御できない課題に苦悶する」
ことになり、過度のプレッシャーから、ミスをしやすくなります。

親としては
「受験するのは親ではなく、子ども自身」
であることを認識し、合否にこだわるのではなく、子どもが準備を出し切れるようにサポートすることが大切です。

2 想定外の番狂わせに備える

受験当日は、緊張や不安から
「番狂わせ」
と呼ばれる予想外の出来事が起こりやすくなります。

初めての環境や状況の中では、心理的な動揺がプラスマイナス10〜20%のパフォーマンス差につながることもあります。

これは、学校の成績や企業の業績、株価の上下にさえも通じる話です。

実力があっても
「センチメント(気持ち)」
によって成績が2割変わるということが、どんな重要な場面でも起こり得るのです。

本番でパフォーマンスを落とさないためには、心理的なマネジメントが欠かせません。

正しい状況予測、フラットな自己認知、リスク抽出、そして制御のリハーサルといった事前準備が、子どもの実力を引き出す助けになります。

3 思い上がりを避ける

「思い上がり」
は、必要な不安感を鈍らせ、
「危険予知」
をおろそかにしてしまいます。

気持ちに余裕を持ち、明るく過ごすことが大切ですが、かといって
「合格は当然」
などと調子に乗ると、逆に失敗のもとになります。

そこで
「ヘッジ戦略」
として、心の中に保険をかけておくことが有効です。

例えば、
「行けなくてもいいさ」
「これで人生が決まるわけじゃない」
「もし行けたらラッキー」
「ダメならダメで、次、大学入試ではリベンジすればいい」
といった保険の気持ちを持つことで、片方の結果に偏らず、どちらに転んでも大丈夫と思えるようになります。

この心の保険をかけておけば、実際に合格しても保険が無駄になるだけで、損することはありません。

そうやって、心に余裕を持つことが
「正しいマインドセット」
なのです。

4「練習は本番のように、本番は練習のように」

これは、心理制御の基本とも言える考え方です。

練習中はできるだけ本番を意識して取り組み、本番では練習のように自然体で臨むことが、パフォーマンスを安定させる秘訣です。

5.「夢もなくおそれもなく」

この言葉は、ルネサンス期に活躍した女傑、マントヴァ侯爵夫人イザベッラ・デステの書斎に掲げられていたモットーです。

彼女は政治的にも知的にも卓越した手腕を持ち、ルネサンス期の欧州ファッションのリーダーでありながら、国家が危機に陥った時には冷静沈着に行動し、小国を守り抜いた人物でした。

彼女は、夫が敵国に捕虜となっても、周囲の批判や侮辱に負けず、自分のペースで状況を打開する最善のタイミングをじっくり待ち続けました。

イザベッラが守り抜いたのは、外的な圧力に屈するのではなく、自分の役割を淡々と全うすることだったのです。

このモットーは
「勝って驕らず、負けて腐らず」
「失意泰然、得意淡然」
と同様、心を平静に保つ大切さを教えてくれます。

受験生も、親も、不安や高揚感に心を乱されることなく、平静心を持って
「できることに注力する」
ことが最も重要なのです。

受験生が集中すべきは
「合格」
への執着ではなく、当日に最高のパフォーマンスを発揮することです。

親もまた、
「自分ができること」
に目を向け、子どもが穏やかに受験に臨める環境を整えることが役割です。

結果について過度に気を揉むのではなく、淡々と日々のプロセスを積み重ねていくことが、子どもにとっても親にとっても受験を乗り切る最良の支えとなるのです。

著:畑中鐵丸

00188_ビジネスプロジェクト失敗に備えるということ

0018700186を、攻守を逆に考えたものです。
想定QAを事前に作成しておけば、
「落ち武者狩り」
にも対抗できるでしょう。

そのためには、変更の痕跡管理を徹底することです。

方針や目標が変更された際、いつ、どのように変更されたのかを明確に追えるよう、痕跡をしっかり残すことです。


1 失敗を見越した事前準備

万が一の事態に備え、状況を整理し、説明のための記録を残しておくことが重要。
プロジェクトがどのようなリスクにさらされ、どのような対応策が検討されてきたのか、履歴も含めて検証しているか?

2 証拠となるデータの保持

将来、責任の所在が問われたとき、証拠として使える形で必要なデータや記録を保持しているかどうか。

3 対外的な説明準備

失敗が発生した場合、なぜそのプロセスや方針が採用され、どのように変更が行われたのかについて、外部に対して明確に説明できるよう準備を怠らない。

4 楽観主義に偏らない戦局認識

プロジェクトの失敗を考慮することは、自らの立場を守る手段であると同時に、関係者全員を守る行動でもある。

5 検証結果を振り返る機会とする

失敗した際には、反省の材料とし、次に活かすための
「良き学びの機会」
として捉える。


プロジェクト推進者の仕事は、あらゆるリスクを見越し、責任ある立場として記録を残し、
「適切な行動を取った」
と、後から説明できるようリスク管理の方法を決定することにあります。

「慎重に対応する」
ということは、
・身の程をわきまえ、
・楽観バイアスに惑わされず、
・戦う前に逃げ道を確保する狡猾さを持つ
ということです。


尚、生き残る人間とは、戦う前にリアルに負けを想定できる人間です。

自決の場面をイメージし、自決用の安楽死薬を用意しておくと、精神的余裕が生まれ、バイアスなく戦局を客観視できます。

結果として、高い割合で勝つか、少なくとも生き延び、自決の準備は無駄に終わるのです。

卑怯や卑劣と思われるかもしれませんが、古代中国の天才戦術思想家もこう言っています。
「三十六計中、逃げるが上策なり」


プロジェクトが成功すると信じることは重要ですが、度を超えた楽観主義は、自分と関係者を地獄に突き落とします。

「単純な成功を目指して仲良く、楽観的に考える」
のではなく、
「プロジェクトが失敗した場合に、適切に行動したことを説明できるようにして、落ち武者狩りに会わないこと」
と認識し行動することこそが、
「他人のカネやリソースを使ってプロジェクトを推進する者としての誠実さである」
といえるでしょう。

著:畑中鐵丸

00187_ビジネスプロジェクト失敗に備える(その2)_プロジェクト担当者のための事前チェックリスト

プロジェクト担当者として、プロジェクトの責任を果たすためには、準備段階から確認が欠かせません。

以下は、プロジェクト進行中に発生するリスクや課題に備え、適切な行動が取られていたかを事前に準備するためのチェックリストです。

プロジェクトが円滑に進み、説明責任を果たせるように、各項目について慎重に確認していきます。

推進方策の確認

1 プロジェクト全体のオプション調査

プロジェクトのビジネス目標に照らし、実行上の障害(コスト、労力、全体的な負荷)もふまえたうえで、すべてのデリバリオプションを調査したか。
関係者間で十分な議論を行い、リソース配分や現実的なコストについて合意が得られているか。

2 ビジネスニーズの共有と変化への備え  

プロジェクトのビジネスニーズが、主要な関係者と共有され、全員が共通の認識を持っているか。
また、プロジェクトオーナーや上層部から方針変更があった場合、それを適切に記録し、関係者全員に通知する手続きを設けているか。

3 要求仕様とプロジェクト成果の整合性  

プロジェクトの成果物が、当初の要求仕様を確実に反映しているか。
また、成果物が要求仕様から逸脱している場合、その要件を満たすための調整がどのように行われるか、あらかじめ関係者と合意が取れているか。
変更が発生した場合に、承認プロセスと履歴が記録されるよう体制を整えているか。

4 調達ルートの検討状況  

調達において、供給元のリソースや価格を考慮し、低廉かつ合理的な選択肢が検討されているか。
また、選定基準やコスト面での妥当性について、判断根拠を明確にし、記録が残されているか。
調達における全体のコストがビジネス目的に照らして妥当であるかを確認しているか。

5 プロジェクトのマーケット価値に関する仮説検証  

プロジェクトが市場での関心を引き、ビジネス価値を発揮するものとする仮説を立て、検証を行っているか。
仮説に対する異論や意見が出た際、関係者間で議論し、責任範囲や意見の違いを明確に整理しているか。

6 調達手順の客観性・妥当性  

調達手順に客観性と妥当性が確保され、主要な関係者や上層部も同意しているか。
プロセスが透明で、不明瞭な部分がないかを確認し、調達の妥当性を証明できるよう、必要な記録を残しているか。

7 推進段階取りの明確性と合意  

プロジェクトの推進段階が明確に定義され、各段階で主要な関係者からの承認が得られているか。
進行中に修正が必要な場合、その内容が速やかに関係者全員に共有され、適切な手続きを通じて反映される仕組みがあるか。変更内容の履歴も記録しているか。

 プロジェクト推進戦略に関するリスクの認識  

プロジェクトオーナーや関係者が、プロジェクト進行に影響を与える可能性のあるリスク要素をあらかじめ認識しているか。
リスクを明確に記録し、状況に応じて適切な対応が取れるよう、リスク管理計画を整えているか。


上記の各項目を事前に確認することで、プロジェクトの進行過程での判断の妥当性と管理の透明性を確保し、最終的に責任の所在を明確に示す準備が整います。

著:畑中鐵丸

00186_ビジネスプロジェクト失敗に備える(その1)_査問用チェックリストと質問事項

ビジネスプロジェクトが失敗に至った場合、プロジェクトの目的達成や責任の所在について明確にし、関係者が適切な行動を取っていたかを検証するために、以下の項目を査問します。

このチェックリストでは、プロジェクト遂行の各段階での関係者間の認識共有、リスク管理、調達手順の妥当性が確保されていたかどうかを確認します。

推進方策の確認

1 プロジェクト全体のオプション調査について 

プロジェクトのビジネス目標と実行上の障害(コスト、労力、全体的な負荷)をふまえ、デリバリに関する全オプションが調査されていたか。リソースやコスト面も含め、プロジェクト達成のために現実的で合理的な選択肢が十分に検討されていたか。

2 ビジネスニーズの共有と変化への備え  

プロジェクトのビジネスニーズが、主要関係者間で共通認識として確立されていたか。
また、プロジェクトオーナーや上層部による方針変更(「ゲーム・チェンジ」など)に備え、その変更が適切に記録され、関係者全員に共有されていたか。

3 要求仕様とプロジェクト成果の整合性  

プロジェクトの成果物が当初の要求仕様を正確に反映していたかどうか。
また、成果物が仕様と異なる場合、ビジネス要求を満たすための調整が行われたか。
要求仕様に変更があった際、その承認プロセスや履歴が適切に記録されているか。

4 調達ルートの検討状況  

調達にあたり、供給側のリソースや価格を考慮した上で低廉な選択肢が検討されていたか。
調達における選定基準や価格面での合理性がどのように判断され、その記録が残っているか。
また、ビジネス上でのコスト合理性も含めた検討が行われたか。

5 プロジェクトのマーケット価値に関する仮説検証  

プロジェクトが市場の関心を引き、ビジネスとしての価値を発揮するものであるかについて仮説が立てられ、その仮説がどのように検証されたか。
プロジェクトの効果やリスクについて異論が出た場合、その議論が適時に行われ、意見の違いに対する責任範囲も明確に区切られていたかどうか。

6 調達手順の客観性・妥当性  

調達プロセスにおいて客観性と妥当性が確保されていたか。
また、主要関係者や上層部もその手順に同意していたかを確認する。
プロセスに不透明な点がなく、調達の妥当性を証明できる記録が残されているか。

7 推進段階取りの明確性と合意  

プロジェクト推進における各段階が明確に定義され、主要関係者からの合意が得られていたか。
また、進行中に段階取りの修正が必要となった場合、その内容が関係者全員に共有され、適切な手続きが行われていたか。
その履歴も含めて確認する。

8 プロジェクト推進戦略に関するリスクの認識  

プロジェクトオーナーや関係者が、方針変更やプロジェクト戦略に影響を及ぼすリスク要素を事前に認識し、これを明確に記録していたかどうか。
また、そのリスクがどのように管理され、プロジェクト進行上で適切に対応されていたか。


上記の各項目を通じて、プロジェクト進行過程での判断の妥当性と管理の透明性を検証し、説明責任を追及することで、責任の所在を明らかにします。

上記は、総務省内の政府情報システム改革検討会の文書をお手本としています。

https://www.soumu.go.jp/schresult.html?q=%E6%94%BF%E5%BA%9C%E6%83%85%E5%A0%B1%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%A0%E6%94%B9%E9%9D%A9%E6%A4%9C%E8%A8%8E%E4%BC%9A#gsc.tab=0&gsc.q=%E6%94%BF%E5%BA%9C%E6%83%85%E5%A0%B1%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%A0%E6%94%B9%E9%9D%A9%E6%A4%9C%E8%A8%8E%E4%BC%9A&gsc.page=1

次の、32ページ~35ページを基に、ビジネスプロジェクトにおける合理的な想定質問として、整理したものです。

https://www.soumu.go.jp/main_content/000104852.pdf

上記を参考に、他(たとえば、親会社と子会社間の共同プロジェクト等)にも応用できる、ということです。

著:畑中鐵丸

00185_不動産会社の法的アドバイスにどう向き合うか:非弁行為のリスクと実務的対応策の引き出し方

00181001820018300184について、もう少し補足しておきましょう。

もしも、今回の案件について、不動産会社が、契約書の有効性・無効性の違いなど、法的なアドバイスをして報酬を得えようとしたのであれば、非弁行為となります。

「弁護士資格を持っている者しか行ってはいけないと法律で定められている行為」
を弁護士資格のない会社(あるいは人)が行ったことになるからです。

不動産取引等において、不動産会社から法律的なアドバイスを受けたという事例を耳にしますが、その多くが誤解や認識不足に基づく、というようなことが少なくありません。

彼らは法律の専門家ではないため、結論が誤っていることがしばしばあります。

このような場合、不動産会社の説明を受ける側は
「2×2は6だけど、2×2×2は38ということでOK?」
といった狂気的な会話をしているような感覚に陥り、どこからどう修正を始めるべきか悩まされます。

このような状況では、あれこれと詳細な議論を重ねるよりも、
「君に意見は聞いていない。黙らっしゃい。できる対応のみ教示せよ」
という強いスタンスで対応するのが最も効果的です。

つまり、不動産会社のアドバイスの真偽を検証するよりも、あくまで
「非専門家が提供できる実務的な対応策」
を聞き出すように促すことが重要です。

不動産会社に対して
「非専門家が提供できる実務的な対応策」
を聞き出す場合も、
「ミエル化・カタチ化・言語化・文書化・フォーマル化」
を求め、実務的な対応策を、曖昧な言葉ではなく、具体的な形で示してもらうようにすれば、誤解を防ぎ、混乱を避けられましょう。

正確な法律判断が必要な場合は、法律の専門家である弁護士に相談し、専門的なサポートを求めましょう。

著:畑中鐵丸

00184_契約書有効性と信頼性を保障するための対応策

001810018200183について、補足します。

日本の民法においては、意思主義、すなわち、特段の文書や形式なく、相互の意思表示が合致すれば、それで法的に有効な契約が成立します。

じゃあ、
「契約書は何なんだ?」
という話になると、意思表示が合致した痕跡を証拠として残し、後日の紛争に備える、自主的な危機管理手段であり、任意のもの、という扱いです。

したがって、証拠の形式に特段の制約がなく、合理的経験則に照らして、当人の意思が反映された痕跡であれば、裁判になっても相応の耐性を獲得する、と考えられます。

「電子メールは法的に有効な証拠か?」
ということを、大真面目に議論しているサイト等がありますが、
「メールが改ざんされた」
との例外的な状況ではない限り、意思内容を立証する有効な証拠としては、十分認められることは疑いありません(ただ、取引の規模に照らして、表現や電子メールという体裁自体が異常なまでにカジュアルである、と裁判官が判断すると、意思が明確に反映されていない、とされることはあり得ますが)。

さて、本件(001810018200183)ですが、

本人確認していなくて、偽造(「本人の許可なく押印した」の意味)の可能性も否定できませんが、弁護士法の点ではやや微妙なビヘイビアとはいえ、一応、国から営業許認可をもらった不動産会社が借主と貸主の間にたって実務を担当していますし、彼らが、偽造をして、刑事罰に問われたり、許認可を剥奪されるようなことをあえてする動機に乏しい、ということもありますので、まあ、全く信用できないわけではなく、意思内容を示す痕跡としては、相応に取扱ができるレベルと考えられます。

また、表示された意思内容も、巨額の、異常な取引、というよりも、常識的で妥当で合理的な処理を明確にした文書であり、その点からしても、目くじらたてて、実印だ印鑑証明だ、とわめきたてる強度の必要性もなかったので、記名押印でよしとした、というスタンスもありかと存じます。

どうしても心配であれば、
「契約解除」
もあり得るかと思いますが、
「取るべきリスクと割くべき時間とエネルギーとのバランスを考えると、どうか」
というところでしょうか。

まあ、現実的な打開策としては、

1)立会人として、不動産会社の代表者に署名させる

2)さらに、賃貸人の記名押印の下部に、不動産会社から
「本件記名押印が、本人の意思を反映していることを表明し、保証する 不動産会社<印>」
と一文・名前・ハンコをもらう

のいずれかで対応して差し支えないような気がします。

旧賃貸人が入院中ということは、解除契約自体も微妙な感じになりますので、いずれにせよ、問題の根本は変わらないような気がします。

だとすれば、旧賃貸人の意思が明確にならないリスクを、保証人ないし不動産会社ないし双方に転嫁する方法が現実的でしょう。

著:畑中鐵丸

00183_ケーススタディ_契約における名前の表記と意思表示

<事例/質問>

アパートを経営しています。

先日、不動産会社から
「賃借人が高齢のため、賃借人および保証人の変更契約が必要」
との連絡がありました。

賃借人は入院し、自署や実印(印鑑証明付きの登録印)が難しいとのことです。

過去のご助言(0018100182)に基づき、以下のように最も強度の高い対策を取ることにしました。

対策1
「土地保有者及び賃貸人名義変更通知書」、「連帯保証人変更に関する覚書」(債権債務清算条項を効かせる)を作成し、旧賃借人の署名欄の直下に「上記は、●●(旧賃借人)の意思に基づくものであることを表明し、保証する」と記載し、新賃借人が署名・押印する

対策2
文書の末尾に立会人として不動産会社の代表者が「本書が、●●(旧賃借人)の意思に基づくものであることを、立会人として、表明し、保証する」と記載し、署名・押印を行う

その上で、不動産会社がもってきた契約書を確認したところ、もともとの契約書と今回の契約に関わる書類において、氏名欄に、旧常用漢字・常用漢字の違いがあることがわかりました。

もともとの契約書では、旧賃借人の記名欄に「旧常用漢字」が使用されています。

今回の契約に関わる旧賃借人・新賃借人・保証人は、親子関係で全員苗字が同じなのですが、名前にはすべて「常用漢字」を使用しています。

質問です。

1 今回の契約書において、旧賃借人の名前も「常用漢字」で記載して問題はないでしょうか?

2 もともとの契約書に合わせて、旧賃借人の名前だけ「旧常用漢字」にする必要があるのでしょうか?

3 なお、不動産会社によると、パソコンで旧常用漢字が出てこないため、対応に悩んでいると、言っています。

<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>

「常用漢字を使おうが、旧常用漢字を使おうが、どちらでも差し支えない」
ということになります。

住所と氏名の両要素で本人特定しますので。

同じ住所に●●●(旧常用漢字)と◎◎◎(常用漢字)の2名いれば大変ですが、特定の個人をさすことは明らかです。

在日外国人の中には、何十回、何百回と契約を重ねても、本名を名乗らずに通名(ペンネーム)で契約を行う方がいます。

しかし、その場合でも契約が無効になることはありません。

たとえば、歌手の「松田聖子」さんとの契約を考えてみてください。

本名の「蒲池法子」でサインしても、芸名の「松田聖子」でサインしても、それだけで契約が無効になることはありません。

同じく、契約の成立には
「意思表示の合致」
が最も重要であり、その痕跡さえ確かであれば問題ないのです。

つまり、
“「松田聖子こと蒲池法子」という、該当する住所に住むただ一人の日本人がその意思表示を示した”
という痕跡が揺るぎない限り、契約内容の有効性は保持されるのです。

正式には、

「●●●(旧常用漢字)こと◎◎◎(常用漢字)   ◎◎◎(常用漢字)<印>」

が確実だと思います。

著:畑中鐵丸