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経済界連載「鐵丸弁護士直伝!勝ち組企業養成講座」

其ノ六「銀行支店長の甘言に気をつけろ」

今回の相談者

有明製パン株式会社 オーナー 有明聡子(61歳)

相談内容

 先生、ごきげんよう。ところでね、先生ね、今日はちょっと先生のご意見をうかがいたいんです。
 芝浦の方に長年使っていないパン工場跡地があるんですけどね、最近、また不動産市況がいいみたいで、都心に新築マンション作ると結構いい値段で売れるそうなんです。
 当社は、バブル期に等価交換やらサブリースやら銀行に散々騙されましたんで、今度は、人に頼らず自分でやろうと思いまして、工場跡地マンション作って売りに出そうと思ってるんですの。
 雑誌で読んだんですけど、所帯染みたマンションじゃなくて、デザイナーズマンションっていうんですか、ナウなヤングの情報発信基地みたいな、え?今そんな言葉使わない?、あ、そ。ま、ようするにハイカラなマンションなんですのよ。そういうのつくると、バカ売れするそうですのよ。
 それで、先日、この計画をメインバンクの「よこしま銀行」の支店長に話したところ、「是非、この会社を使ってください。もう、ナウなヤングにバカ受けのマンション作らせたら、ここ、ほんと、バッチグーです」なんていって、よこしま銀行さんがメインバンクやってらっしゃる建設業者を紹介してきたんです。
 中堅ゼネコンで、「ツキナミ建設」っていうんですが、パッとしないし、なんか公共工事減って経営苦しいって噂聞くし、私としては、正直、二の足踏んでるんですけど、よこしまの支店長は、「ツキナミさん使っていただければ、建設資金の融資についてはどのような相談にでも乗ります」なんて言ってるんです。
 先生、どう思います?

其ノ七「昔の残業代を支払えと要求された!」

今回の相談者

どっきり寿司チェーン オーナー 大瀞 炙郎(46歳)

相談内容

 先生、ちわっす。景気はどうかって?いやもう、絶好調ですよ!
 銀座に今度新しい店オープンしましたから、ぜひ一度来てくださいよ。新鮮なネタ用意させておきますから。
 といっても、回転寿司ですから、雰囲気的にはイマイチですが、そこんとこは勘弁してください。
 今日来ましたのはね、実は、ちょっと前まで神田店の店長やらしてた奴がいまして、先月「体がもたねえ」つって退職しやがったんですがね、その野郎、弁護士に依頼して、「入社してから辞めるまでの5年分の残業代が未払いだ。すぐに払え。払わないと訴訟を提起します」なんて内容証明でぬかしてきやがったんですよ。
 そんなバカな話あるかって感じですよ。そいつ、板前やってたんですが、前の店、女将さんに手ぇ出して追い出されたんで、オレがひろってやったようなもんなんですよ。
 給料だって、800万円もやってたんですぜ。
 店のレジちょろまかしやがっても、多少ことは目ぇつむってきた。
 なのに、なんだよ、これ、って感じですよ。ったく。
 こんなの払わなくていいですよねぇ?先生?

其ノ八「仕事のチョンボで都内に大停電を起こしてしまった!」

今回の相談者

株式会社ケアレス・シッパー 江戸川登(41歳)

相談内容

 先生、先生、先生、たっ、たっ、大変なんすよ〜。どうにかしてくださいよ〜。
 落ち着けって?そんなの無理すよ。
 いや、どうもこうも。ほら、うち、海運業やってるんですが、今日、でけえ荷物運ぶ仕事があって、いつものようにウチの現場の人間に、利根川に船、出させたんですよ。
 いや、その荷物って、動物園からの依頼で、キリンなんですけどね。
で、キリンだから、当然背丈が高いわけですよ。頑丈でとんでもなく背丈の高い檻を船に載っけて、ドンブラコ、ドンブラコ、って運んでたわけですよ。
 船長やらしてたのは、ベテランなんですけどね、利根川んとこに、送電線があるのをすっかり忘れてやがった。そしたら、送電線にひっかけやがって。
 そうそう、今朝の東京の大停電。それ、ウチですよ。ウチなんですよ。
え?ウチが株式公開してるかって?
 ちょっと前、株式公開目指すなんて大きなこと言ってましたっけ。あんなの銀行や取引先に対するホラに決まってるじゃないすか。ええ、ウチは正真正銘の非上場ですよ。
 てゆうか、そんなことどうでもいいんですよ。
 とにかく、電話はじゃんじゃんかかってくるわ、テレビレポーターは押しかけるわ。
 もう、だめ。破産ですよ。破産。
 助けてくださいよ〜。

其ノ九「新会社法を活用したファミリー企業の内紛防止法」

今回の相談者

タカダ帆布鞄 社長 高田信一郎 <たかだしんいちろう>(65歳)

相談内容

 先生、いつもお世話になっております。
 今日は当社の新製品をお持ちしました。ウチの次男坊のヤツのアイデアなんですが、カバンよりアパレルが流行るってことで作ってみた帆布のジャケットです。ちょっとゴワゴワして重いですが、着慣れると大変心地いいですよ。もっとも着慣れるまで15年くらいかかるかもしれませんが。え、分厚い柔道着みたいだって?そんなこと言わないで、是非着てみてくださいよ。売れなくて困っているんですから。
 今日は、ちょっと先生のお知恵をお借りしたいと思い、参りました。
 現在、私の子供3人とも事業を継ぐ気で仕事をしてくれています。ですが、長男は仕事より遊びが好きで、こいつはどうしょうもない。毎晩銀座でクラブ活動ですよ。
 次男は次男で、アパレルをやりたいなんて言っている。そう、この柔道着、じゃなかった、帆布ジャケットを作ったのは次男で、「パリコレに出るんだ」なんて夢みたいなことを言ってる。
 もう泣けてきますよ。
 職人気質のまじめな私のDNAを一番色濃く継いでいるのは三男なんですよ。なので、私としては三男に会社を継がせたい。とはいえ、今、私が引退して、三男に継がせると、長男、次男が反発して、会社の中がガタガタになる。
 私の目の黒いうちに何かできることをしておきたいのですが、何かいい方法ありますでしょうか。

其ノ拾「時効おそるべし」

今回の相談者

株式会社イダテン急便 会長 佐山信(67歳)

相談内容

 先生、どうもお世話になっております。ようやく景気が戻ってまいりまして弊社取扱高も鰻登りです。
 ネット企業っていうんですか、最近は、インターネット販売の業者からの依頼が急増しており、時代を感じますね。
 ただ、ネット企業ってのはタチが悪いですな。
 先日もちょっとおかしなことがありまして、今日は、相談に参りました。
 最近、本やDVDをネットで格安販売している会社がありますよね。そうそう、「サバンナ・ドット・コム」とかいう会社です。
 サバンナは、彼らがまだまだ小さい会社のころから受注品の配達を請け負って参りました。ところが、最近当社に税務調査に入ったことがきっかけで、請求漏れが判明しました。
 私もそんな大した額ではなかろうと思っていたのですが、それが結構な額でして、ざっと2000万円にもなります。ちょっと前に実家の酒屋を継ぐってことで辞めてった営業課長がいい加減な人間で、どうやらそいつのチョンボらしい。
 当社が仕事をしたのはまぎれもない事実なので、サバンナさんに払ってくれって言いましたところ、担当の経理部長は「すぐ払わしていただきます」なんて言ってたのに、最近入った法務部長が横やりを入れてきて「時効だから支払わない」なんて言い出した。
 私も時効ぐらい知っていますが、5年だとか10年だとかの話でしょ。せいぜい2、3年前の話で時効はないでしょう。
 サバンナだか野蛮人だか知らないけど、こちらとしてもそんな小僧みたいな零細企業からバカにされて、黙っているわけにはいかない。先生、お願いですから、利息も含めてきっちり支払わせ、オトシマエをつけてください。