仕事の基本である
「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)」
について述べておりますが、前回の
「報告」
に続き、今回は、
「連絡」
についてです。
1 報告と連絡の違い
仕事において行うべき連絡についてですが、
「連絡と報告の違いがわからない」
などとよくいわれます。
これは私なりの区別ですが、報告とは
「過去に発生した事実や発生しつつある経過を、上司の指揮命令や報告義務に基づいて行うもの」
ですが、連絡とは
「将来における予定や計画を自発的に行うもの」
です。
コンサルタントの活動でいいますと、クライアントに対して、
「アセスメントの結果、こういう事実が判明した」
「インタビューの結果、こういう回答を得た」
「データを解析したところ、こういう結果を得た」
「3期分の財務諸表をレビューし、経年変化について調べた結果、このような顕著な推移が認められた」
等といった過去の出来事を伝えるのが報告です。
そして、以上のような報告を前提に、
「改善プランを策定する」
というミッションを達成するために、
「動員可能資源を把握するため、関連資料をご準備いただき、ミーティングをさせていただきたい」
「線表を修正するため、各プロセスの期限を再検証したいので、御社責任者の予定を調整して、再度、オールハンズミーティングを行わせていただきたい」
等これからのアクションを伝えるのが連絡である、と理解されます。
連絡においても、報告と同様、タイミングよく行うことが必要ですし、内容面においても
「何時、どこで、何を、どのような方法で行うか」
という点について、正確かつ明瞭に記載した文書でタイミングよく行うことが求められます。
2 連絡の受信者に対するフォロー
連絡については、たまに、
「そんな連絡を受けていない」
「聞いていない」
「知らなかった」
「忘れた」
といった話が出てきます。
また、連絡においてこちらがお願いした準備や用意をしてこない、ということもよく発生します。
無論、これらは連絡の受け手側に問題があるのですが、仕事のデキる人間は、こういう事態まで先取りし、受信者から
「当方の連絡を了解し、確認した」
旨のCONFIRMATIONの返信をもらったりしますし、REMAINDER(備忘再告知)という形で予定日程が近づくと念押しするための連絡を行ったりする場合があります。
いずれにせよ、連絡を効果的に行うためには、受け手の理解認識状況をふまえて、効果的に対応するとともに、細かなフォローが必要と思います。
少し面倒くさい話をしますと、意思表示に関する法的取扱においては、意思表示を発信する側ではなく、意思表示を受ける相手側の便宜がすべてにおいて優先されます。
これは、
「到達主義」
と呼ばれるドクトリンで、取引における法的でフォーマルなコミュニケーションにおいては、
「連絡したらそれでOK」
ではなく、
「連絡内容が相手方にきちんと伝わったか否かまで、連絡発信者においてきちんとフォローしろ」
というルールが適用されます。
法的な連絡文書を送りつける場合もカウンターパートの受領確認まで取っておかないと、後日、
「そんな文書は知らんし、見たことない」
等という形でトラブルが発生することがあります。
このように、「言ったはずなのに忘れている」
「連絡したはずなのに届いていない」
というのは、
「すべて連絡した側の連絡方法が悪い。発信者が注意すべきだ」
というのが、フォーマルな取扱におけるルールです。
3 上司への連絡
上司その他自分の上位者に対する連絡に関しては、受信者が
「自分以外の部下からも様々な連絡を集中して受ける」
という環境にあり、また自分よりも数倍も忙しい立場にあるので、
「連絡をしても、きちんと受けられない」
ということがままあります。
ですので、上司に対する連絡については、こういう点も含めて、
「どのようにすれば相手にきちんと伝わるかどうか」
を考えながら、方法・タイミングともに効果的な形で実施することが必要ですし、こういうことがスマートにできる人間は、一般に出世も早いようです。
(つづく)
著:畑中鐵丸
初出:『筆鋒鋭利』No.040、「ポリスマガジン」誌、2010年12月号(2010年11月20日発売)