受験シーズンは終わりましたが、その後も、公務員試験、司法試験(と司法試験予備試験)、公認会計士試験、税理士試験、宅建士試験、医師国家試験等の国家試験などなど、日本は、年柄年中試験が行われています。
というわけで、中学受験や高校受験や大学受験という点では、少し時期を逸しましたが、受験生や受験生を抱える親御さんに向けに、試験一般に関し役に立つ、
「受験直前のメンタルマネジメント」
を、お話したいと思います。
私は、受験については、まんざら、知らないわけでも経験がないわけでもありません。
中学受験→私立の進学校に合格
大学受験→東大文一現役合格
ということで、まあまあ、語れるくらいの実績はあります。
とはいえ、普段の私の話し方がカジュアルで、適当で、アホそうな喋りのせいか(相手に合わせて、会話の水準を下げているだけなのですが・・・)、周囲の人間は、誰も私のことを
「賢い」
「知的」
「頭がいい」
とは言ってくれません。
どうも、私の見え方・評価は、
「賢い」
「知的」
「頭がいい」
というより、
「要領がいい」
「うまくやりやがる」
「小賢しい」
という人間のようです。
むかしの話ですが、東大に合格したとき、この報を伝え聞いた親戚のおばちゃんたちが、次々にお祝いの電話してくれました。
そのとき、おばちゃんたち、ほぼ全員、誰も、
「苦労したかいあったね」
「よう勉強したいんやね」
「努力家やね」
「真面目にがんばったんやね」
「頭いいんやね」
という言い方はしませんでした。
おばちゃんたちの口から出てきた言葉は、
「あんた、昔から、要領だけは良かったからな~」
「うまいことやりやったな~」
というものでした。
私は、
「おばちゃん、何言うてんねん。人をカンニングしたみたいに言うて。人聞きの悪い。要領だけで、東大通るか!」
と言い返してました。
確かに、努力家でありませんでしたし、要領の良さも否定しません。
といいますか、努力や苦労を売り物にするようなブサイクなマネは美意識に反します。
漫画に出てくるような、机に
「必勝」
「東大合格」
といった紙を貼り、
「東大一直線」
と書いた鉢巻をして、頭脳のパフォーマンスが低下する夜中にバカみたいに長時間勉強する、みたいな、これ見よがしなガンバリは、まったくしませんでした。
というか、
「そういう暑苦しい連中は、たいてい東大に合格できてないんじゃないか」
というくらい、実際の東大生は、今も昔も、無駄な努力が嫌いなスマートな連中が多いと思います。
とはいえ、メンタルを含め、自分をうまく制御するのは、受験競争を勝ち抜く上では、非常に重要です。
その意味では、
「自分として、どうやって、メンタルをコントロールするか」
という課題への対処方法は、常に、意識的に形成して、自分なりに会得しておりました。
今回は、受験生や受験生のお子様をお持ちのクライアントさん向けに、
「受験本番を前にした受験生のための、マインドセット術」
という形でお送りしているメール・メッセージをご披露させていただきます。
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1 前提
本番では、いろいろな想定外の事態が生じます。
番狂わせ、といわれるものです。
極度の緊張感、初めての環境と経験、結果がどこまでも確実ではなく蓋然性に左右されるという不安感。
この状況想定と、メンタルコントロールの巧拙により、プラスマイナス10~20%のパフォーマンス差を生じます。
学校の成績もそうですが、企業業績であれ、為替であれ、株価であれ、このことは妥当します。
実力値が、センチメントによって、最大2割上下することは、どんなプロジェクトの責任者(受験生も、受験プロジェクトの責任者ですから該当しますね)であれ、しっかり自覚すべきです。
本番マネジメント(心理制御)に成功したら点数2割上がり、失敗したら2割下がる、ということは、あちこちで革命が起こる、ということです。
だからこそ、心理制御は重要であり、そのためには、正しい状況予測と、フラットな自己認知と、効果的なリスク抽出と、制御リハーサルが必要なのです。
2 思い上がらない
まず、思い上がってはいけません。
思い上がりは、楽観バイアスを助長し、正しい不安醸成や危険予知を鈍麻させますので、百害あって一利なしです。
かといって、不安に苛まれるのもよくありません。
だから、機嫌はよくすべきです。
機嫌をよくしないといけませんが、調子に乗っては行けません。
いちばんいいのは、ヘッジ戦略です。
要するに、保険をかけること。
「別に行けなくてもいいや」
「これで人生決まるわけでもないし」
「でも行けたらラッキー」
「ダメならダメで、次、大学入試ではリベンジすればいい」
という心理的な保険をかけること。
どっちかに転んだら、人生終わる。
こんなギャンブルをすると、本当に人生終わります。
どっちに転んでも、大丈夫なようにしておけば、保険が無駄になるだけ。心理的保険なので保険料はタダです。
これが正しいマインドセットです。
3 練習は本番のように、本番は練習のように
これもよくいわれる心理制御術です。
あせったり、パニックたりするのは、練習段階で済ませておくべきです。
模試は、あくまでストレステストですので、さんざん焦って失敗し、ミスやエラーをどんどん経験しておくべきです。
本番は、焦ったら負けです。
焦る状況でも焦らず。
そもそも、自分が焦っているときは、他人はもっと焦っている。
だいたい、試験なんてものは、底意地の悪い出題者が、受験者を焦らせ、有意な偏差を出して、採点しやすくするために作っている。
「他人が焦っている」
という状況を冷静に判断し、相対的に落ち着き、どうやって、損害を減らし、生き残るか。
そうやって考えれば、損害回避方法、損害逓減方法といった、
「あの手、この手、奥の手」
が、いくらでも見えてくる。
本番では、そういう心理戦を乗り越えるスキルが決定的に重要です。
4 夢もなくおそれもなく
この言葉は、ルネサンス期に活躍した女傑マントヴァ侯爵夫人イサベッラ・デステの書斎にかかげられたモットーです。
このイザベッラ・デステですが、塩野七生女史の初期作品にも出てきますが、ようやくするとこんな人です。
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「ルネサンスの華」
と讃えられた美貌に加え、教養豊かで美的センスにすぐれた彼女はイタリアのみならず、欧州のファッションリーダーとなります。
フランス王室の女性たちもマントヴァ侯夫人の真似をしたとか。
しかし、彼女の真骨頂はやはり政治手腕にあるとわたしは思います。
結婚からおよそ20年後、夫は戦争で捕虜になり、35歳のイザベッラは敵に屈服することなく、味方であるはずの同盟国につけ込まれず、小国を守り抜かねばならなくなりました。
早期釈放を求める夫をはじめとした周囲に
「淫売」
とまで罵られながら、彼女はあらゆる手を尽くしてもっとも有利な時を待ちます。
息子を代わりの人質に取られることもなく、他国の君主が欲望や愚かさから外国の軍をイタリアの地に入れてしまうことも多かった中、けっして国境を踏ませず、イタリアの他勢力の軍をマントヴァに近づけることもなく、交渉でお金が必要でも、自分の宝石を売り払って増税することなく内政も支えきったイザベッラ。
敵国からさえ賞讃されます。
その夫とも10年で死別したイザベッラは若い息子の摂政として卓越した政治力を発揮し、マントヴァと実家フェラーラを守り抜き、1527年のスペイン・ドイツ連合軍による
「サッコ・ディ・ローマ(ローマ略奪)」
の際には3千人もの人を滞在していた宮殿に保護したりもしています。
https://ameblo.jp/cavy-do1010rain/entry-12026848266.html
より引用
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ドナルド・トランプと、金日成と、チェ・ゲバラと、カストロと、織田信長と、ココ・シャネルをかけ合わせたメンタルと知性をもつ、で、外見がグレース・ケリーのような、ファッションリーダーの女王陛下。
そんな趣の、城郭防御戦と外交・内政の天才で、超毒舌家のおばさんです。
彼女が、戦や重要な外交交渉に臨む時、このモットーをみて、
「よっしゃー」
といって出陣し、勝って勝って勝ちまくったそうです。
要するに、
「勝って驕らず、負けて腐らず」
「平静心」
「失意泰然得意淡然」
と同様の趣旨の言葉です。
受験生の仕事は、勝つことに執着することして不安を抱えてイライラしてエモーショナルに自己制御を失うことではなく、平静心で最高のパフォーマンスを受験会場で披瀝すること。
合否は、自分ではない、別の誰かさんが決めることであり、そんなことを気に病んでも仕方がない。
受験生は、自分ができること、自分で制御できること、自分のスペックを限界まで出し切ること、そのために心理的環境を整えること、に注力すべきです。
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このアドバイスを受けて、
「平静かつ冷静に対処ができ、うまく結果が出た」
という方もいて、ある程度役に立つマインドセットと考えております。
皆様も、使ってみてください。