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本コンテンツシリーズにおいては、個人で商売する方や、資産家や投資家や企業のオーナー経営者の方、出世して成功しようという意欲に燃える若い方、言い換えれば、「お金持ちや小金持ち、あるいはこれを目指す野心家の方々」へのリテラシー啓蒙として、「ビジネス弁護士として、無駄に四半世紀ほど、カネや欲にまつわるエゴの衝突の最前線を歩んできた、認知度も好感度もイマイチの、畑中鐵丸」の矮小にして独善的な知識と経験に基づく、処世のための「正しい非常識」をいくつか記しておたいと思います。
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企業や国家運営は言うに及ばず、仕事の上でも、私生活においても、処世全般においても、物事の目的を明確にすることは重要です。
そして、
「人生」
という、この世のすべての方にとって
「もっとも、重大で重要なプロジェクト」
についても、当然、目的をはっきりさせるべき、という話をさせていただきました。
私個人としても、人生を送る上での目的というものをはっきり、くっきり、明確に堅持しています。
いえ、そんなに、気色ばんで、眦決して吠えるほど、志の高いものではありません。
私の人生において、究極の目的は、
「人生を楽しむこと」
です。
では
「楽しい人生」
とはなんぞや、その定義はどうなっているんだ、という具体論をお話したいと思います。
無論、生きる目的は、ひとそれぞれで、いろいろ異論はあるでしょうが、知性と教養と思考力をフル回転してたどり着いた、普遍的で、みなさんにも納得できるような形で整理した、私なりの
「楽しい人生」
の定義を紹介いたします。
私の定義する
「楽しい人生」
としては、まず、その1として、
「自由であること」
が要素として必要です。
イヤなことを強制されたりせず、好き勝手でき、なにか自分のしたいことを邪魔されたり、ブツブツ文句を言われたりしない、というのが
「楽しい人生」
の重要な要素です。
懲役刑という刑罰は、
「自由」
という人間の根源的欲求を奪うものであり、自由が奪われることに対する圧倒的忌避感が刑罰の意義を構成し、社会秩序を支えています。
カタギとして娑婆で普通に生きていると、なかなか
「自由」
のありがたみが体感できませんが、このような逆説的な想像を行えば、自由の意義と価値と重要性は、皆さん、ご納得いただけるものと思います。
軍隊や、軍隊的秩序を有する組織、例えば、スポーツチームや宗教団体や企業や暴力団や暴走族や学校や趣味の集まりやPTA等も、多かれ少なかれ組織の構成員となることと引き換えに自由を奪われることになります。
無論、人と交わったり、人間関係が広がることにより得られるメリットや潤いも大きいですが、度を越せば、楽しい人生が送れなくなり、何のために生きているのかわからなくなります。
例えば、
「中央官庁にキャリア官僚として就職すること」
に多大なメリットを感じ、このメリットによって
「笑いが止まらない、シビれるくらい楽しい人生」
を送れる、と考える東大生等もいるようです。
しかしながら、中央官庁は、言わずとしれた、我が国最凶のブラック企業。
入省(入庁)と引き換えに、私生活の基盤が破壊されるくらい、忙しく、自由を喪失することになることはほぼ確実であり、私個人としては、
「官僚になったら、絶対、愉快な人生を送れない」
と判断し、
「官僚とか、マジ勘弁」
と結論づけています。
「どの程度の自由を売り渡して、収入を始めとする生活基盤や人間関係や各種安全保障を手に入れるか」
は、人それぞれですが、いずれにせよ、自由がある限界以上に喪失すれば、楽しい人生を送る基盤が破壊されるので、この
「トレードオフ」課題
は、就職や転職の際、真剣に考える必要があります。
ちなみに、私個人としての印象で言えば、
「この世でもっとも自由が奪われる営み」
は、
「出生から幼少期までの育児」
です。
世のお母様方は、本当に、大変なご苦労をされています。
「母になる」
という覚悟は、懲役5年の刑期で服役するくらいの厳しい意思決定です。
ときどき、育児放棄をしたり、挙げ句の果には、邪魔に感じて子供を殺してしまう方もいるようですが、おそらく、
「母になる」
という決意をする段階で、
「母になることの延長線上にある、育児活動に伴う、自由な生活基盤の根底的な破壊」
という過酷な未来を想像できなかったんだと思います。
まあ、われわれ男性としても、社会全体としても、もっともっと、この状況を理解し、支えていくべきでしょうね。
いずれにせよ、楽しい人生には自由が欠かせませんし、生活の糧を得たり、浮世の義理を果たすために、自由を放棄する場面では、
「どのくらいまで、不自由を容認するか」、
言葉を変えれば、
「人生をつまんなくするか」
を、具体的に考えながら、意思決定をすることが必要になります。
著:畑中鐵丸
初出:『筆鋒鋭利』No.133-1、「ポリスマガジン」誌、2018年9月号(2018年8月20日発売)