実際の企業運営現場に即した
「お仕事・各論編」
を述べてまいります。
今回は、各論の詳細に入る前に、序論として、そもそも企業がどのように運営されているか、ということをザックリとみてまいりたいと思います。
1 仕事を通じて奉仕する対象である「企業」とは
仕事とは、頭脳や体を使って
「対象」
に働きかけ、
「対象」
にとって有用なものを創りだし、それによって
「対象」
から賃金を得る活動を言います。
そして、一般のビジネスパースンの場合、
「奉仕対象」
となっているのが、企業ということになります。
仕事を通じて奉仕する対象である
「企業」
ですが、
「営利を目的として計画的・組織的に活動する経済主体」
と定義されています。
日本においては、企業のほとんどは会社組織となっており、また、会社組織の大半は株式会社の形態を取っています。
したがって、ここでは、
「企業とは概ね株式会社のことを指す」
という前提の下、お話ししてまいります。
(1)企業の特徴
では、企業すなわち株式会社は、どのような特徴をもっているのでしょうか。
株式会社は、通常の人間と違って、姿・形がありません。
「株式会社は法人である」
などといわれますが、法人とは、自然人(我々通常の人間)とは異なる、
「バーチャル(仮想上の)人間」
です。
法人には、人の集合体(社団法人)と財産の集合体(財団法人)の2種がありますが、いずれも、
「自然人ではないものの、財産的基礎があるので取引社会に参加させても、自然人と同様に取引失敗の責任を負わせることが可能である」
という特徴があります。
そこで、これら人の集まり(社団)や財産のカタマリ(財産)について、一定の要件を備えたものを
「本来の人(ヒト)とは異なるが、法律上、人と同等に扱ってやろう」
とし、
「法人」
として扱うこととしたのです。
(2)企業の生態その1・意思決定
次に、企業の生態を見てまいります。
まず、企業は、自然人と違い、それ自体意思をもたない存在ですので、適当な方法で意思を決定し、また、その決定した意思の内容を誰か適当な自然人(代表者)を通じて
「法人の意思」
として表明してもらわなければなりません。
無論、法人の代表者を誰にするか、ということについても適当な方法で決定しておかなければなりません。
このように、企業においては、代表者を決めたり、その意思内容を決めたり、という活動が必要になります。
企業のこのような生態は、毎年6月末ころ多く観察できます。
株式を公開している株式会社(いわゆる上場企業)は、毎年3月末に決算期を迎え、その3ヶ月以内に定時株主総会を開催します。
「株主総会において企業は何をしているか」
というと、企業の方針を決定し、当該方針を実施する人間(取締役)を選出しているのです。
企業のオーナーである株主全体の方向性が一致していれば問題ないのですが、総会を撹乱させることを目的とした特殊な株主の方(総会実務の世界では「特殊株主」と呼ばれますが、日常用語でいう「総会屋」の方です)や、“ホニャララファンド”や“ホニャララパートナーズ”のように
「総会で元気よく発言される株主の方」
がいらっしゃる会社においては、このプロセスでモメることになります。
そして、企業のこのような生態に関連・派生して、モメ事に対応するお仕事が必要になります。
すなわち、企業においては、企業の意思決定が円滑に行われるようにするために様々な仕事をしていく部署が必要になりますが、多くの企業では
「総務部」
というところがその種の仕事全般を担っています。
ときどき、
「企業の意思決定が円滑に行われるようにする」
ために総会屋にお金を渡したりする総務部の方もいらっしゃりますが、これはご法度とされており、たまにバレて逮捕されたりすることがあります。
次回は、企業の生態の続きとして、経営資源の調達・活用や営業活動といった生態をみてまいります。
著:畑中鐵丸
初出:『筆鋒鋭利』No.049、「ポリスマガジン」誌、2011年9月号(2011年10月20日発売)