<事例/質問>
アパートを経営しています。
不動産会社から
「賃借人が高齢のため、賃借人および保証人の変更契約が必要」
との連絡がありました。
署名の真正性や法的効果の強度については00181で、以下のように教えていただき、理解しました。
(1)自署+実印(印鑑証明付きの登録印)
(2)記名(名前印刷)+実印
(3)自署+契約印と同じ認め印(登録されていない三文判)
(4)自署+契約印と異なる認め印
(5)記名+契約印と同じ認め印
ただし、(1)や(2)が不可能な場合、不動産会社の協力を得て進める方法はありますでしょうか?
<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>
高齢の賃借人について賃借契約や保証人の変更が必要となり、不動産会社から
「賃借人および保証人の変更契約が必要」
との連絡を受けた場合の対応方法について説明します。
署名や印鑑の種類が法的効力に影響を及ぼすため、法的効果の強い順に推奨される手順を整理します。
まず、一般的には
「(1)自署+実印」
や
「(2)記名+実印」
を用いると法的効力が高くなりますが、旧賃借人の実印が用意できない場合には、不動産会社の協力を得ることで契約書類の信頼性を補強することが可能です。
以下に具体的な方法を、強度の高い順に記載します。
対策のポイントと強度順
1 最も強度の高い対策(A案)
・「土地保有者及び賃貸人名義変更通知書」や、「連帯保証人変更に関する覚書」(債権債務清算条項を効かせること(これが最重要となる))を作成し、旧賃借人の署名欄の直下に「上記は、●●(旧賃借人)の意思に基づくものであることを表明し、保証する」という文言を新賃借人が記入し、署名・押印します。
・また、文書の末尾に立会人として不動産会社の代表者が署名・押印を行い、「本書が、●●(旧賃借人)の意思に基づくものであることを、立会人として、表明し、保証する」と記載します。
これにより、新賃借人と不動産会社が双方で旧賃借人の意思を保証する形となり、実印が用いられなくても、法的信頼性が高まります。
2 次に強い対策(B案)
・旧賃借人の署名欄の直下に「上記は、●●(旧賃借人)の意思に基づくものであることを表明し、保証する」と新賃借人が記入し、署名・押印する方法です。
・A案と異なり、不動産会社の立会いがないため強度はやや落ちますが、旧賃借人の意思が確認されたことを示すことで一定の信頼性を確保できます。
3 立会人のみの保証(C案)
・旧賃借人の署名欄に保証文言は入れず、立会人として不動産会社の代表者が文書の末尾に署名・押印を行い、「本書が、●●(旧賃借人)の意思に基づくものであることを、立会人として、表明し、保証する」との記載を加えます。
・これは新賃借人による保証がないため、信頼性はA案、B案に比べてやや低くなります。
4 最低限の対応(D案)
・特段の追加措置や記載を加えず、旧賃借人の押印のみで進める方法です。信頼性が低くなり、後日の紛争リスクが高まるため、他の選択肢が難しい場合のみに限られます。
補足
旧賃借人が実印を用いなくても、不動産会社が立会人として契約に関与することで、宅建業者としての立場から一定の信頼性が認められることがあります。
著:畑中鐵丸