組織内でよく見られる
「ルーティン業務のブラックボックス化」
や
「イノベーションへの抵抗」
について、その背景と解決策については、以下のように整理できます。
1 現状の課題:ルーティン業務の支配力とイノベーションへの抵抗
(1)業務のブラックボックス化
従業員がルーティン業務に閉じこもり、外部から業務内容が見えない状態が続く。
「何をしているのかわからない」
という状況が組織全体の柔軟性を奪っている。
(2)イノベーションの困難さ
イノベーションを求められると、従業員の間に以下のような抵抗が生じる。
- 努力不足とリスク回避:「苦労の割にリターンが不明確」「失敗時の責任を問われる」「努力が報われない」などを理由に積極的に動こうとしない。
- 口実の探索:「イノベーションに取り組むとルーティンがおろそかになる」という言い訳を考え、実質的にイノベーションを回避する。
- 表面上のポーズ:表向きは対応しているように見せかけ、実際には責任を回避。
- 快適さの維持:改善提案や業務棚卸しに対して、「みんなの環境を壊されない」ようにと抵抗。
- 最終的な回避:「最悪、会社を辞めればいい」と開き直り、努力を諦めるケースも。
2 解決策の提案:教育、整備体制、毒薬の活用
(1)教育の強化
従業員の意識改革を目指し、定期的な教育や研修を実施する。 特に、革新の意義や成功事例をわかりやすく伝え、モチベーションの向上を目指す。
(2)時間をかけた文化変革
長期的な視点のアプローチ。従業員の価値観を無理に変えようとせず、新たな価値観を持った新人が徐々に組織を浸透させていくのを待つ。
(3)劇的なイベントの導入
M&Aや部門提携、一部事業譲渡など、劇的なイベントを活用し、外部からのショックを与え、組織全体を揺さぶり、強制的にイノベーションを生み出す。
(4)合理的な体制整備
次の具体策により、ルーティン業務への依存から脱却を図る。
- 業務の分掌:ルーティン業務を担当する「一般職」と、革新的に取り組む「総合職」を明確に選定。
- 業務の透明化と効率化:ルーティン業務を棚卸し、ブラックボックス化を解消。徹底した工程分析により標準化・省力化を実現。
- イノベーション部門の強化:省力化で生まれた余剰人員をイノベーション部門に再構成し、「一件・一責任者」を原則としてプロジェクトを進める。また、成功報酬や失敗時のリスク軽減策を明確明確にし、従業員のモチベーションを引き出す。
(5)リスク管理と安全ネット
体制整備を進めていく上で想定される課題(従業員の抵抗、責任転嫁など)に備え、権限や責任を明確化する。
3 経済合理性と法的合理性の視点
変革においては、次のポイントを検証します。
- 外部依存の存在:外部コンサルタントや専門家への依存度が高いかどうかをチェックする。
- 回避責任の排除:責任が社内で免除になり、外部に責任転嫁される事態を防ぐ。。
- ジャッジ体制の構築:経営判断を行う権限範囲や意思決定のルールを明確にし、誤った判断があった場合には責任を明確にする。
4 事業戦略におけるバランス
事業運営においては、
「小さな成功(バントヒット)」
と
「大きな成果(ホームラン)」
の両立が課題となります。
- 例:オーナー社長は両方の成果を出せるが、一般従業員はバントヒットすら困難な場合が多い。
- 外部コンサルタントの限界:小さな成功の指導はできても、大きな成功のノウハウや経験を持たない。
- 課題:バントヒットの経験のない従業員に、いきなりホームランを打てるのは現実的ではない。段階的な育成が必要。
5 まとめ
ルーティン業務に依存する組織から脱却し、イノベーションを進めるには、教育や体制整備、リスク管理をバランスよく進めることが大切です。
オーナー社長や経営陣が中心となり、変革に取り組む必要があります。
組織全体が巻き込まれる形で進むことが成功の鍵となるでしょう。
著:畑中鐵丸