企業経営に関して、意思決定のスピードと質は生命線です。
特に、経営統括本部が主催する社長報告会は、各事業ユニットの管理代表者、子会社の社長が経営状況を報告し、必要な議論を行う場です。
ここでは、従来の報告会とは一線を画した、よりシャープなルールが適用されます。
この場は、単なる報告の場ではありません。
各子会社社長の毎月5分間の報告発表持ち時間は、株主総会さながら、経営の本質を問う姿勢で挑まなければなりません。
この場では何が求められるのでしょうか。
社長報告会のルールを整理します。
1 数字は見ればわかる。余計な説明はいらない
財務状況や売上の数字を長々と説明するのは時間の無駄です。
数字は報告資料を見れば明白であり、問題は、その
「背景」
と
「対策」
にあります。
「前年比〇〇%の成長です!」
などの自慢は不要です。
問題があるなら、それをどう解決するかを語るべきです。
2 重要なのは「未達」「異常」「課題」
報告の目的は、成功談を語ることではなく、経営リスクを把握し、迅速に対策を打つことです。
予算未達、例外的なトラブル、異常なデータ——こうしたポイントを明確にし、
「事実解明→原因解析→対策抽出→承認が必要な事項の討議」
をコンパクトに行うことが求められます。
3 選択肢の提案は最低3つ
討議を上程する際には、必ず選択肢と
「プロ/コン分析(メリット・デメリット)」
を添えて提出します。
選択肢は、以下の3種類を最低限用意することが必須です。
(1)純理論的選択肢(ロジックベースで最適解と考えられる案)
(2)業界慣行に基づく選択肢(競合や市場の動向を考慮した案)
(3)社長好みの選択肢(大胆で型破りな案)
この3つの視点を抑えることで、経営本部がより冷静な判断を下せるようになります。
4 まともな報告ができないなら潔く謝れ
報告に必要な準備が間に合わなかった場合、無駄な埋め合わせ資料で時間を浪費することは厳禁です。
その場合は、
「私はバカで無能できちんとした上程できるものができませんでした。すみません」
と素直に謝罪し、次の報告者に譲ること。
経営本部にとって、未整理の話を聞くことほど無駄な時間はありません。
5 戦場立つ覚悟を持て
社長報告会は、経営者としての真価が問われる場です。
中途半端な報告や曖昧な結論は通用せず、鋭い眼光を持つ経営本部の番犬たちに食いちぎられることになります。
ここで求められるのは、次のような姿勢です。
(1)言い訳をしない
(2)できなかった理由ではなく、どうすればできるのかを語る
(3)甘えを捨てる
(4)環境や他人のせいは、一切通用しない
(5)自己弁護をしない
(6)評価されるのは、実績と次の打ち手のみ
この場に立つ報告者は、事実と解決策を武器に、徹底的な準備をして挑まなければなりません。
覚悟を持つ者だけが、経営の砦を守ることができるのです。
著:畑中鐵丸