世の中には、脅しを武器にしてカネを巻き上げようとする連中がいます。
反社会的勢力も犯罪グループも、さらには労働基準監督署でさえも、その根っこは同じです。
「脅してカネを取る」
という目的に違いはありません。
脅しが成り立つのは、相手が怖がるからです。
彼らが一番得意とするのは、相手が恐れをなしてすぐに従うこと。
しかし、この手法には決定的な弱点があります。
それは、証拠を残されると一気に勢いを失うことです。
脅す側にとって、録音や記録を取られるのは最悪です。
なぜなら、
「言った言わない」
の曖昧な状況だからこそ脅しは成立するもの。
証拠が残れば、それは単なる不正行為の記録になり、もう力づくで押し切ることはできません。
だからこそ、録音や記録を取られた瞬間、彼らは急におとなしくなるのです。
とはいえ、脅しが通じないからといって、すぐに諦めるわけではありません。
ここで重要なのは、彼らが最も困るのは、反発されることではなく、時間をかけてグズグズされることだという点です。
たとえば、あなたが突然、高額な請求を受けたとしましょう。
脅す側は、
「いますぐ払え」
「お前のためにならないぞ」
と畳みかけてきます。
ここで
「わかりました」
と言ってしまえば、彼らの思うツボ。
しかし、
「ちょっと考えます」
「確認してから返事します」
と時間を引き延ばした途端、彼らはイライラし始めます。
なぜなら、彼らにとって最も大切なのは
「早くカネを取ること」
だからです。
時間が経てば経つほど、相手の警戒心は強まり、弁護士や第三者に相談する余裕も生まれる。
さらに、時間が長引けば、
「この案件にこれ以上時間をかけてもメリットがない」
と判断し、手を引くことすらあります。
これは、いわば
「持久戦」。
彼らはスピード勝負で成果を上げるビジネスモデルで動いているため、じわじわと時間をかけられると、収益性がどんどん悪化していくのです。
反社会的勢力でも、犯罪グループでも、労働基準監督署でも、脅しのビジネスにとって最大の弱点は
「時間をかけさせられる」
ことなのです。
つまり、彼らに対抗する最も効果的な方法は、
「急がない」
こと。
「すぐに答えを出さない」
「考える時間を確保する」
「第三者に相談する
──こうした対応をすることで、相手の戦術は崩れていきます。焦って行動するのではなく、じっくりと構えていること。
それこそが、脅しに対する最強の防御策なのです。
著:畑中鐵丸