00204_ケーススタディ_ビジョンなき企業とプロジェクトの迷走—コンサルはどう関与すべきか?

<事例/質問>

ある企業が新規事業を立ち上げることになり、コンサルタントとして相談を受けました。

ところが、
「このプロジェクト、何を目指してるんですか?」
と経営陣に聞いても、答えがフワッとしているんです。

ビジョンが定まっていないから、戦略の方向性も曖昧。

そのせいで、戦略補正力が弱く、RFP(提案依頼書)も散漫になり、実行フェーズに入っても思い通りに進まない、という状況です。

アイデア自体は出てくるものの、
・どの段階で何を収穫すべきか
・収穫したものが改善につながるのか
といったアプローチが不明確なため、実行に移してもうまく機能しません。

現在、コンサルタントとして考えているコミットの範囲は、以下の3つです。

1 戦略を正しく形成する方法論の導入
2 戦略例の提示
3 実行の監視

方法論や戦略例は、プロジェクトごとに調整しながら進められるため、コンサルタントとしての知見や手腕が活きると考えています。

しかし、根本的な問題は、企業のビジョンが不安定なことです。

さらに、企業には頼れるアドバイザーもいないため、いつ、どのプロジェクトで、オーナー社長による
「ちゃぶ台返し」
起こるかわからないという不安があります。

このまま進めて、本当に大丈夫なのだろうか?

それとも、もっと別のアプローチが必要なのだろうか?

コンサルタントとして、どこまでコミットし、どんな布石を打つべきかを悩んでいます。

<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>

この状況、例えるなら
「大工の親方」

「ゼネコン」
の違いに似ています。

腕利き大工が家を建てるとき、
「図面? そんなの頭の中に入ってるよ。カンナとトンカチで、チョチョイのチョイで作るから、金だけ出しな!」
というやり方で進めることができます。

彼は経験と勘で、シンプルな住宅を短期間で建てられるわけです。

しかし、丸の内にそびえ立つ高層ビルを建てるとなると、話はまったく違います。

・プロジェクトファイナンス(資金調達)
・市場調査(需要や収益性の確認)
・設計(用途に応じた計画)
・部材調達(資材の確保)
・施工管理(スケジュール・品質管理)

これらを専門のチームに分け、全体をゼネコンが統括するという流れになります。

つまり、
「大工の腕一本でやる」
のではなく、
「組織的なマネジメント」
が必要になるわけです。

ところが、相談者のクライアント企業は、
「適当な一軒家も建てられない状態で、ゼネコン級のプロジェクトを依頼している」
という状況に見えます。

つまり、
・企業のビジョンが定まっていない
・戦略補正力が弱い
・アイデアを実行するための収穫ポイントが見えていない
この状態で、
「ゼネコンのような包括的な戦略コンサルティングをやってほしい」
と言われても、何をどう進めるべきかが曖昧なままです。

「面倒くせえばあ! バッカじゃねえの? んなの、カンナとトンカチでチョチョイのチョイでやりゃいいじゃん!」
という感覚が抜けずにプロジェクトを進めると、途中で必ず破綻します。

そして、ありがちなパターンとして、企業側はまずコンサルに

1 事業環境の情報提供
2 ブレストやディスカッションパートナー

を依頼し、そこから

3 戦略立案

を作らせ、最後は社内の素人に実行させてみて失敗。

結果、
「やっぱりプロに頼むしかない」
となり、

4 戦略実施を依頼するか、あるいはプロジェクトそのものを諦める。

この流れを見越して、コンサルタント側も最初から
「1〜4の各フェーズを切り分けて受注する」
というやり方を考えてもいいでしょう。

そうしないと、結局は
「ちゃぶ台返し」
のリスクが高まるばかりです。

なぜなら、ビジョンが不安定なままプロジェクトを進めると、企業は途中で不安になり、方向転換を繰り返してしまうからです。

まずは
「家を建てる」
基礎を固めるところから始めること。

それが、相談者のコンサルティングにおける最初の役割なのかもしれません。

著:畑中鐵丸

00203_ゲームに負ける前から判る、「ゲームに負けた状態」とは

不確実性を前提とするゲーム空間において、
「ゲームに負ける状態」
とは、往々にして結果が明らかになる前にすでにわかってしまうものです。

こうした指摘は、裁判や交渉、さらにはビジネスの意志決定に携わる方々にとって、非常に痛烈で示唆に富んでいるのではないでしょうか。

多くの人は、
「勝敗は最後の最後までわからない」
と信じているかもしれません。

しかし実際には、勝敗を確定させるような最終的な結論を待つまでもなく、
「自分がすでに介入機会や制御の契機を喪失している」
ことに気づいたとき、すでにその勝負に敗北しているといえるのです。

そして、それこそが
「ゲームに負ける状態」
なのだ、というわけです。

この
「ゲームに負ける状態」
とは、主に2つのケースに分かれます。

第1のケースは、ゲームのロジックや構造、ルールそのものを理解していない、あるいは誤解している、知ったかぶりしているだけといった状況です。

たとえば裁判であれば、法律や訴訟手続きについて根本的な理解を欠いている状態を指します。

交渉であれば、相手が何を求めているのか、どのような戦略で臨んでいるのかを十分に把握せず、ただ自己流の思い込みで話を進めてしまうケースなどが考えられます。

どのルールが重要か、どのタイミングで勝負が大きく動くかすらわからないままに振る舞うのですから、いくら当事者を名乗っていても、実質的には
「観客同然の置物」
と化しているのに近いかもしれません。

第2のケースは、ゲームのロジックや構造は一応わかっているものの、自分が何をしてもゲームが自分の意思とは無関係に動いてしまうという状況です。

これは、いわゆる力関係の問題が大きく作用しているケースといえるでしょう。

たとえばビジネスの交渉において、相手側が圧倒的なシェアや資本力を持ち、自社がそれに太刀打ちできず交渉の主導権を握られている場合が典型的です。

裁判であれば、相手が決定的な証拠を大量に握っている、一方的に有利な法的立場を確保している、といった具合です。

何をどう工夫してみても結果をコントロールできない状況に陥れば、そこには自分の自由な意思決定はもはや入り込めません。

仮に、そんな状態のまま
「突発的な幸運」
で勝利を拾ったとしても、それは自分の意思や選択がもたらした成果ではないので、素直に喜ぶべきことかどうかは疑わしいのです。

ここでよく耳にする言葉に
「結果オーライ」
があります。

確かに、運よく望外の勝利を手にすること自体は、人によっては
「ラッキーだった」
と感じるでしょう。

けれども、それが
「自分の主体的な働きかけがあったうえでの勝利」
ではないとしたら、果たしてその勝利を誇りに思えるでしょうか。

ドラッカーは
「『自由』とは『責任ある選択ができる状態』である」
と述べたように、私たちは本来、自らの行動とその結果に責任を伴わせることによって、初めて自由を実感できるのではないでしょうか。

「結果オーライ」
は、その責任を放棄したまま結果だけをつかみにいく姿勢だともいえます。

また、
「結果オーライ」
には再現性の問題があります。

もし一度、偶発的な要因によって運良く勝利したとしても、同じやり方を次回に適用したからといって必ずしも同じ成果が得られるわけではありません。

むしろ、一度のラッキーを過信して同じ手段に頼り続けると、長い目で見れば破滅に向かう危険性のほうが高いでしょう。

ギャンブル依存症のパターンをイメージしていただくとわかりやすいかもしれません。

低い確率の賭けに偶然勝ってしまったがゆえに、その勝利を
「自分の実力だ」
と勘違いして繰り返し賭けを行い、最終的にはすべてを失ってしまう。

これは
「偶然」

「実力」
かを見極めずに行動してしまう典型例です。

実は
「ゲームに負ける状態」
を甘く見ることは、人間としての尊厳や矜持を自ら捨ててしまう行為にもつながります。

なぜなら、そこには
「自分で選択する意義」

「世界に働きかける喜び」
がほとんど存在しないからです。

「勝てば官軍、負ければ賊軍」
といった単純な価値観に流されてしまい、
「どうせルールもわからないし、相手には敵わないから、いい加減にやり過ごして最後の結論だけ見守ればいい」
という態度をとるようになってしまうと、その先にあるのは
「主体的な行動」
の崩壊です。

知的探究心や変革への意志を自ら放棄し、あらゆる局面で能動的に学ぶ機会を手放してしまうかもしれません。

では、どのようにすれば
「ゲームに負ける状態」
に陥らずに済むのでしょうか。

まず第1に
「自分が参加しているゲームのルールや構造を正確に理解すること」
が重要です。

裁判であれば、基礎的な法律知識や手続き、証拠の意味や論点整理の仕組みをきちんと押さえる必要があります。

ビジネス交渉であれば、相手の置かれた立場や利害、どのような意図で交渉に臨んでいるのかをリサーチし、こちらが取り得る選択肢を複数用意して交渉に臨みます。

さらに、自分がどのタイミングでどの程度発言し、どういった条件を引き出せる可能性があるかを見極めることも欠かせません。

自分の力が及ばないと判断したら、撤退を含めた他の選択肢も積極的に考えてみるなど、あくまで自発的・能動的に状況を動かそうとする姿勢が大切です。

このように言うのは簡単ですが、実行は決して楽ではありません。

現代社会は情報が氾濫しているようでいて、実際には偏りや玉石混交が激しく、確かな知識とフェイクを見分ける作業は骨が折れます。

とりあえず楽な方法で、
「最後はなんとかなるだろう」
と逃避してしまうほうが、ある意味では心の安定を得やすいという面もあるかもしれません。

しかし、そのまま安易な道を選び、
「ゲームのロジックもわからない、あるいは通用しない」
状態に甘んじてしまうと、結局は
「自由」
とは無縁のままです。

たとえ思わぬ幸運に恵まれて目的を達成できたとしても、それは自分の力で勝ち取ったものではないので、後ろめたさや不安ばかりが心に残るのではないでしょうか。

ドラッカーが言うように
「自由とは責任ある選択ができる状態」
だと考えますと、情報収集や状況分析、そしてそこから導かれる戦略の組み立てと実行が大きな意味を持ちます。

自分が置かれた環境やリソースを冷静に把握し、どこにチャンスがあるのかを見極め、そのチャンスを活かすために適切なリスクをとって責任を負う。

そうして得られた成果こそ、本当の意味での喜びや誇りにつながるはずです。

逆に、偶発的な幸運や不確かな情報に身を委ねて
「結果オーライ」
を期待するだけでは、いつかその付けが回ってくるでしょう。

「結果オーライ」
に魅力を感じる方は多いかもしれません。

特に不確実性の高いゲーム空間では、現実に打ち手がほとんどない状況もあるでしょう。

しかし、
「結果オーライ」
に甘えることと
「打ち手が見つからない中でも主体的に模索すること」
はまったく次元の異なる行為です。

前者は思考を放棄した上で流れに身を任せるだけですが、後者は考えに考え抜いたうえで可能性を探るプロセスを放棄しない姿勢といえます。

そこには、わずかであっても
「自由」
を確保したいという人間的な欲求が込められています。

さらに、
「ゲームに負ける状態」
に陥っているときに、突如として勝利を手にしてしまうのは、ある意味では
「甘い毒」
に近い現象です。

まるで努力も理解もないままにすべてが上手くいってしまったことで、自らの無知や対応策の欠如、主体性の欠如に気づく機会を失ってしまうからです。

こうした勝利に味を占め、
「自分は何もしなくても運が味方してくれる」
と思い込んでしまった場合、次の同じような局面でこそ痛烈な失敗を味わう可能性が非常に高まります。

いわば、一時のまぐれ当たりに慣れてしまうと、後々の負けが一層深刻になってしまうのです。

「自由と自律と自尊を旨として行動する人間」
であるならば、こうしたまぐれ勝ちには決して安易に浮かれるべきではないと思います。

仮に手にした報酬が偶然に左右されたものであるのなら、
「自分の意思と選択の結果ではない」
という後ろめたさや不安がつきまとうでしょうし、同じ方法で次もうまくいく保証もありません。

何より、自らの矜持を保ちたいのであれば、努力や戦略を通じて自分でつかみ取った勝利のほうが遥かに価値があるはずです。

たとえその過程で苦労が多くとも、自分の判断を積み重ねた結果としての勝利であれば、そこには再現性や学びが伴います。

少し辛辣な物言いをすれば、
「結果オーライ」
と唱えるだけで満足している人は、周囲からは主体性のない人物と見られ、軽んじられる可能性もあるでしょう。

厳しい社会の中で仕事をし、何らかの大きな意思決定を迫られる立場にあれば、
「結果オーライ」
ほど危うい考え方はありません。

そこには知識や分析、対話や交渉のプロセスがすっぽり抜け落ちていて、いわば
「運頼み」
の行動しか残らないのです。

それはただのギャンブルに近い行為といっても差し支えないでしょう。

繰り返しになりますが、真に
「ゲームに負ける状態」
に陥っているかどうかは、しばしば結果が出る前に判断できます。

自分の意思や選択がどれほど機能しているのかを冷静に見つめ直すことで、
「このままでは何をやってももう結果には影響を与えられない」
という敗北を感じ取る瞬間があるはずです。

そこからは、ただ待つだけではなく、新たな選択肢を模索したり、ルールや情報を改めて学んだり、もし不可能ならば撤退を含めた打開策を検討する――そうした行動が必要になります。

けれども、そこで安易に
「どうせ無理だから、結果だけ待とう」
「運が向いてくれたらラッキーだ」
と考えるようでは、
「自由と自律と自尊」
を大切にする人としては残念ながら失格といわざるを得ません。

自らの行動が結果を生むという因果の過程を蔑ろにし、責任を引き受ける姿勢を放棄しているのですから、もはやドラッカーのいう
「自由」
からはほど遠い立場に自分を追い込んでいることになります。

もし思わぬ形で勝てたとしても、それは自分の意志の勝利とは呼べず、ただの偶然でしかありません。

したがって、
「ゲームに負ける状態」
であったにもかかわらず、偶発的に報酬を得たときこそ、むしろ自戒すべきなのです。

その勝利を素直に喜んでしまうと、同じような曖昧な戦略や無為無策のまま次のゲームに突入する恐れがあるからです。

こうした事態を避けるには、やはり
「自分がどのゲームに参加しているのか」
「そのゲームのルールは何か」
「自分は何をどこまでコントロールできるのか」
を、丹念に調べて理解したうえで行動するしかありません。

そこにこそ、主体的な行動の醍醐味と、人間としての尊厳が宿るのだと考えます。

最後に、少々挑発的な言い方をお許しいただけるなら、
「結果オーライ」
という言葉に安住してしまう人に未来はありません。

運や偶然、外部からの思わぬアクシデントに任せる生き方では、いつまでたっても自分の力を高めることができず、意思決定における責任やリスクを正面から引き受ける経験も積めないからです。

むしろ今こそ、
「自分はどれだけゲームのロジックや構造を理解し、力関係を見極められているのか」
「自分の意思決定はどの程度、結果に反映されうるのか」
を点検する必要があります。

そうした点検や学習があってこそ、自らの自由を確立し、主体的に行動する醍醐味を味わうことができるのではないでしょうか。

ゲームにおける勝利とは、たとえ不確実性の高い環境でも、まったくの偶然ではなく、自分の意思と判断が確かに組み込まれていると感じられる瞬間のことだと思います。

そうでなければ、どんなに成果を得ても、そこに
「本当の意味での達成感」
は伴わないでしょう。

「ゲームに負ける状態」
を回避し、主体的な意思決定のもとで勝利を勝ち取る。

その積み重ねこそが、自らの矜持を育み、自由を体現するための道筋なのではないでしょうか。

毒を含んだ言い方をさせていただくならば、安易な
「結果オーライ」
に甘んじていては、いつか大きな代償を支払う日が来るかもしれません。

だからこそ今、私たちは
「自分はゲームを動かす主体なのだ」
という強い意識を持ち、自分にコントロールしうる要素を見極め、責任ある選択を積み重ねていくべきなのです。

著:畑中鐵丸

00202_ケーススタディ_「ホウレンソウが機能しない会社」を変えるには?

<事例/質問>

ふわっとした言い方ですが、会社組織の風通しをよくしたいと考えています。

どうも、社長⇔管理職⇔社員間での報告・連絡・相談(ホウレンソウ)が滞っているようで、叱咤激励しても埒が明かないのです。

昭和のやりかたではダメなことはわかっているのですが・・・。

<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>

社内の報告・連絡・相談(ホウレンソウ)を活発化させ、組織内で情報と意思を巡らせるためには、無理なく実行できる仕組みを整えることが重要です。

1 日報・週報の運用

まず、日報については、スケジュール管理ツールやアプリを活用するのが効率的です。

紙やメールでの運用では、手間がかかるうえに継続が難しくなるため、システム化することで負担を減らし、継続しやすくします。

一方、週報については、単なる業務報告ではなく、以下のポイントを中心に記載する形式にするのがおすすめです。

・「課題と対策」「注意喚起」「共有すべき情報」
・「合理性」「効率性」「生産性」「段取り」「オーナー目線」をどのように取り入れたか(または取り入れられなかったか、あるいは学べたこと)
・管理職の場合、部下に対して何を教えてあげられたか

ただの作業報告ではなく、業務の振り返りや改善点を共有することで、全体の成長につながります。

2 社長への報告会

社長との情報共有がスムーズになることで、意思決定のスピードが上がり、組織全体の方向性が明確になります。

ただし、堅苦しい報告会では負担が増えるため、柔軟な方法を取り入れるのが効果的です。

例えば、週に1回
「社長ランチ」

「朝食会」
を開き、
「一人3分以内で直面している課題を話す」
といったシンプルなルールで運用するのがおすすめです。

短時間で報告することで、要点を絞る習慣がつき、管理職同士の情報共有の場にもなります。

また、月に1回は、普段の業務とは異なるテーマで
「外部講師を招いた勉強会」
を実施し、その後に食事会を開くのも有効です。

業務の枠を超えたコミュニケーションを増やすことで、部門間の壁をなくし、会社全体の一体感を強めることができます。

3 予算の策定(予算に基づくレビュー)

会社全体で
「予算を立て、定期的に振り返る」
ことは、経営の透明性を高め、組織全体にオーナー意識を持たせるのに有効です。

予算策定の際には、単なる数字の計画ではなく、
「どのような目的で、その予算を使うのか」
を明確にし、定期的にレビューを行う仕組みを作るとよいでしょう。

管理職が
「数字に強くなる」
ことで、組織全体の視点が広がり、業務改善にもつながります。

ただし、予算の管理がプレッシャーにならないよう、
「計画→実行→振り返り(PDCA)を回しながら学ぶ場」
として運用することが大切です。

まとめ

・日報はシステム化し、週報では課題や学びを共有する形式にする
・社長との報告会は、短時間で気軽に話せる場(ランチ・朝食会)を設ける
・管理職同士の壁をなくすため、勉強会+食事会を定期的に開催する
・予算の策定とレビューを「学びの場」として運用し、オーナー意識を育てる

社内の仕組みを改善するには、
「厳しく管理する」
のではなく、
「ラクで簡単で楽しく」
をテーマにするのがポイントです。

「組織が変わることで、未来が明るくなる」
というメッセージをしっかり伝え、従業員のモチベーションを高めていきましょう。

著:畑中鐵丸

00201_ミスを回避、仕事が進む!「1つのメールに1つのトピック」のススメ

ビジネスメールにおいて、
「あれ? この件、サイトもらったっけ?」
と過去のメールを探したり、相手から
「この件について、返信をいただいておりませんが……」
と聞かれた経験はありませんか?

それは、
「1つのメールに複数のトピック」
を入れてしまったことが原因かもしれません。

「1つのメールに1つのトピック」
は、見落としやモレヌケを防ぐため、そして相手がスムーズに返信できるようにするための仕事術です。

では、なぜ
「1つのメールに1つのトピック」
が推奨されるのでしょうか?

見落とし・モレヌケを防ぐ

メールに複数のトピックを詰め込むと、相手が返信するとき、一部の内容を見落とす可能性が高くなります。

特に忙しい人ほど、メールをざっと読んで、
「とりあえず、この件だけ返そう」
と、メールの前半部分だけ返信し、その結果、
「抜け」
が発生しやすくなります。

たとえば、Aの件とBの件について同じメールで送信した場合、調査や確認が必要なBの件が混在していると、後回しにされるため、 本来すぐに戻ってくるはずのAの件の返信まで遅れてしまう場合があるのです。

しかし、Aの件とBの件を別々のメールで送れば、それぞれ独立したものとして処理されやすくなり、返信の速度が上がります。

相手の負担を減らし、返信をスムーズにする

受信したメールの内容が複数のトピックにまたがっていると、返信する側は
「どこまで答えたらいいのか?」
と悩むことになります。

1つひとつに丁寧に返信しようとすると時間がかかり、結果として返信が後回しになることも。

「1つのメールに1つのトピック」
なら、相手は短時間で瞬時に返信できるため、取引がスムーズになります。

検索・管理が簡単になる

その後メールを見返す際にも、
「1つのメールに1つのトピック」
のルールは役に立ちます。

過去のメールを検索するとき、タイトルを探すだけで、すぐに目的のメールを見つけることができます。

また、スレッドを追うときも、話題が混ざっていると、
「この返信は、緊急のAについて? それとも、Bの件?」
と混乱しがちですが、メールごとに話題を分けていれば、スレッドが整理され、必要な情報がすぐに見つかります。

どれくらい分ければいいか?

「1つのメールに1つのトピック」
のルールを意識する際、どこまで細かく分けても悩むこともあるでしょう。

基本的には、以下の基準で選択してもよいでしょう。

・それぞれ独立した返信が必要なもの

・それぞれ異なる担当者に送るもの

・重要度や締め切りが異なるもの

たとえば、
・ 「来週の会議の日程調整」と「新しいプロジェクトの提案」
・ 「契約書修正点」と「支払いスケジュールの確認」
・ 「A社との進捗報告」と「B社との契約について」
このような場合、別々のメールにするのが理想的です。

ただし、
「A社との契約に関する〇〇の件と△△の件」
など、密接に関連する話題であれば、1通のメールにまとめても問題はありません。

「相手にとってわかりやすいかどうか」
が、良いかどうかの判断基準になります。

まとめ:「1つのメールに1つのトピック」が仕事のマナー

メールの手続きをスムーズにするためには、
「シンプルでわかりやすく」
を意識することが大切です。

その中でも、
「1つのメールに1つのトピック」
のルールを守ることで、
・見落とし・モレヌケを防ぐ
・相手の負担を減らし、返信をスムーズにする
・検索・管理を簡単にする
というメリットが得られます。

「相手に送ればいいや」
ではなく、
「相手がスムーズに処理できるか」
を考えてメールを送信しましょう。

次回メールを送るときは、ぜひこのルールを意識してみてください。

きっと、相手も自分もスムーズに仕事が進められるはずです。

著:畑中鐵丸

00200_活動の成功を支える「収益性」と「仕組みづくり」:ドラッガーの5つの質問で活動継続のための設計図を描く

ひとりよがりの趣味の活動と、社会的意義のある継続的な活動。

この違いを決定づける要素は何だと思いますか。

その分水嶺となるのは
「収益性」
です。

例えるならば、どんなに高性能な車であってもガソリンがなければ途中で止まるのと同様、お金が継続的に回る仕組みを設計上ビルドインしない組織は、やがて活動停止に追い込まれます。

この種の活動設計には、現代経営学の大家、マネジメントの父と呼ばれるピーター F. ドラッガーの有名な5つの質問を考えてみることです。

これらの質問を自分たちの活動に照らして定期的に問い直すことで、方向性を確認し、社会や顧客に対して価値を提供し続ける道筋をつけることができます。

1 私たちのミッションは何か?
私たちが存在する意義とは何か、そして最終的に何を目指すべきか明確にします。

2 顧客は誰か?
その活動を必要としている人や組織は誰なのかを把握し、その対象に焦点をあわせます。

3 顧客にとっての価値は何か?
顧客が何を
「価値」
として感じるのかを考えることで、顧客にとってのニーズに応え、満足してもらう方法を探ります。

4 私たちにとっての成果は何か?
何を達成するのか、また、その成果をどのように測定するのかを明確にします。

5 私たちの計画は何か?
どのように活動を進めていくのかという具体的な行動計画を立て、それを実行します。

この問いに耐えうるように設計された活動は、きっと、未来永劫、継続することができます。

要するに、活動を成功させる鍵は、
「使命」

「収益性」
をしっかりと押さえ、顧客や社会に価値を提供し続けることにあります。

これを可能にする
「仕組みづくり」
が、意義ある活動を実現するための最重要課題と考えます。

著:畑中鐵丸

00199_決裁の流儀:決裁権者に意思決定を求めるための4ステップ

決裁権者に意思決定を求める際には、状況説明から始まり、選択肢の提案、プロコン分析、そして腹案の提案へと進む4ステップが基本となります。

相手の立場を想像し、相手に合わせたアプローチを心がけることが、大切です。

1 状況説明

まず、どのような問題が発生しているのか、またはどのような課題に対応しようとしているのかを、客観的かつ慎重に示すことが重要です。

この部分があやふやでは、後のプロセスが滞ってしまいます。

2 選択肢を抽出する

次に、複数の選択肢を抽出し、提案する段階に入ります。

1つの選択肢だけを持って
「これでどうですか?」
と問うのは避けるべきです。

重要なのは、複数の案を考え、検討材料を広げることです。

選択肢を提案する際には、それぞれが現実的であることを意識しましょう。

3 長・短所を比較する(プロコン分析)

選択肢について、長所と短所を比較します。

このプロセスにより、決裁権者は
「なぜその選択肢が有効なのか」
を論理的に理解することができます。

プロコン分析は、ただ羅列するだけではなく、状況に応じて優先順位をつけたり、コストやリスクの度合いを具体的に示すことが効果的です。

4 腹案を提示する

最後に、自分なりに考え抜いた
「腹案」
を1つ用意します。

腹案とは、上記の1~3のステップを踏まえて
「現状では最も適切だと考えられる案」
のことです。

ここで重要なのは、提案した選択肢を考慮した上で、
「その中からこれが良い」
という明確な意思を示すことです。

これにより、決裁権者は提案内容をより信頼することができます。

逆に、決裁権者に全てを丸投げしてしまうと、信頼関係を損ねる可能性があります。

ポイント:柔軟な決裁方法を意識する

決裁を求める方法(メール・口頭・電話)は、特定の形式に定める必要はありません。

重要なのは、決裁権者の考え方や状況(TPO)を見極めることです。

・忙しい決裁権者にはメールで要点を伝える
・対面での意思疎通が必要な場合には口頭で直接説明する

このように、相手に応じて
「最適な手段」
を選びましょう。

著:畑中鐵丸

00198_コンサルタント業:コンサルタントを支えるスタッフの役割:情報整理と提案のコツ

顧客は、スタッフ個人ではなく、コンサルタントの専門的な知識や能力に対する信頼を軸に依頼してきています。

そのため、スタッフは
「その役割を担うのは、コンサルタントであり、スタッフではない」
と心して業務にあたることが重要です。

スタッフ自身に判断を下す権限を持っているわけではなく、もし顧客に対してジャッジを行うようなことをすれば、顧客が不快感を抱く恐れがあります。

スタッフの役割は、顧客の意図を正確にミエル化し、整理した情報をコンサルタントに提供することにあります。

まず、顧客の要求を正確に把握しなければなりません。

この作業は一見簡単に思われがちですが、実際には、非常に難しいものです。

顧客が使いそうな表現を使ったり、あるいは、スタッフ自身の解釈が入ることは、正確なミエル化とは言い難く、整理が非常に困難となります。

顧客からの要求をコンサルタントに伝える際、何も考えずに
「キラーパス」

「ワンタッチパス」
を投げるような行為や、整理をせず全てをコンサルタントに丸投げする態度は厳禁です。

コンサルタントの負担を増やすだけでなく、顧客対応に遅れが生じる原因となります。

次に重要なのは、コンサルタントの視点を意識して準備を行うことです。

「コンサルタントだったらどう考えるか」
を自分なりに想像し、顧客の要望に応じた選択肢を整理した上でコンサルタントに提案すると、コンサルタントは顧客への解決策をより効率的に検討することが可能になります。

この対応こそが、スピードと質の両面で顧客満足度を高め、コンサルタントの働きを最大限に引き出す鍵となるのです。

著:畑中鐵丸

00197_ケーススタディ_妻の不貞と離婚要求:夫が取るべき法的対応とは?

<事例/質問>

妻が子どもを連れて、家を出ました。

紆余曲折があり、今は別居しています。

私は、何とか、妻と子どもを連れ戻そうといろいろ方策を講じましたが、ここにきて、妻の不貞が発覚しました。

ある日、妻側から、離婚したいと言ってきました。

私は、離婚したくありません。

でも、妻の意思は固いようです。

この先、どのような流れになるのでしょうか?

<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>

膠着状態を脱する意向が妻側において強まり、妻側が新たな局面展開を求めてきた、と考えられます。

しかし、即時の離婚が認められない可能性があったため、
「一定程度別居期間を経由したので、(理由はともあれ)修復不可能な状態に来ているから、離婚させろ」
という趣旨のようです。

我が国の裁判制度の建前では、いきなり離婚を裁判で求める手続きは予定されておらず、どんな理由によるものであれ、まずは、調停を前置せよ、というものであり、これを踏襲することになるでしょう。

20年以上前の最高裁判所判例では、
・有責配偶者であっても、離婚請求可能
・未成熟な子がいるなどして、離婚請求することにより、これらの子が不幸になるようであれば、認めない
というものがあります。

とはいえ、実務では、有責云々にかかわらず、破綻状態にあれば、ほぼ離婚を認め、とっとと財産の整理(合弁事業の解消)を終わらせる、という扱いが定着しています。

夫側としては、
・妻側は有責配偶者
・とはいえ、未成熟な子をもつ側が離婚を求めているので、前記最高裁判例の適用は射程外
・破綻の事実(=修復不能認定)さえあれば、離婚が認められる可能性が大きい
・あとは、カネの問題
・判例・実務では、別居時財産の折半が基本
・しかし、「そもそも、妻は有責であるし、破綻もしていないので、離婚は認められない」「仮に離婚が認められても、カネや財産は手元にないし、今苦しいし、無い袖は振れない。あと、寄与度・貢献面からいっても、足を引っ張られてばかりなので、折半はおかしい」
と、対応することになるでしょう。

著:畑中鐵丸

00196_イノベーションを阻止する壁を壊す:ルーティン支配からの脱却法

組織内でよく見られる
「ルーティン業務のブラックボックス化」

「イノベーションへの抵抗」
について、その背景と解決策については、以下のように整理できます。

1 現状の課題:ルーティン業務の支配力とイノベーションへの抵抗

(1)業務のブラックボックス化

従業員がルーティン業務に閉じこもり、外部から業務内容が見えない状態が続く。
「何をしているのかわからない」
という状況が組織全体の柔軟性を奪っている。

(2)イノベーションの困難さ
イノベーションを求められると、従業員の間に以下のような抵抗が生じる。

  • 努力不足とリスク回避:「苦労の割にリターンが不明確」「失敗時の責任を問われる」「努力が報われない」などを理由に積極的に動こうとしない。
  • 口実の探索:「イノベーションに取り組むとルーティンがおろそかになる」という言い訳を考え、実質的にイノベーションを回避する。
  • 表面上のポーズ:表向きは対応しているように見せかけ、実際には責任を回避。
  • 快適さの維持:改善提案や業務棚卸しに対して、「みんなの環境を壊されない」ようにと抵抗。
  • 最終的な回避:「最悪、会社を辞めればいい」と開き直り、努力を諦めるケースも。

2 解決策の提案:教育、整備体制、毒薬の活用

(1)教育の強化
従業員の意識改革を目指し、定期的な教育や研修を実施する。 特に、革新の意義や成功事例をわかりやすく伝え、モチベーションの向上を目指す。

(2)時間をかけた文化変革
長期的な視点のアプローチ。従業員の価値観を無理に変えようとせず、新たな価値観を持った新人が徐々に組織を浸透させていくのを待つ。

(3)劇的なイベントの導入
M&Aや部門提携、一部事業譲渡など、劇的なイベントを活用し、外部からのショックを与え、組織全体を揺さぶり、強制的にイノベーションを生み出す。

(4)合理的な体制整備
次の具体策により、ルーティン業務への依存から脱却を図る。

  • 業務の分掌:ルーティン業務を担当する「一般職」と、革新的に取り組む「総合職」を明確に選定。
  • 業務の透明化と効率化:ルーティン業務を棚卸し、ブラックボックス化を解消。徹底した工程分析により標準化・省力化を実現。
  • イノベーション部門の強化:省力化で生まれた余剰人員をイノベーション部門に再構成し、「一件・一責任者」を原則としてプロジェクトを進める。また、成功報酬や失敗時のリスク軽減策を明確明確にし、従業員のモチベーションを引き出す。

(5)リスク管理と安全ネット
体制整備を進めていく上で想定される課題(従業員の抵抗、責任転嫁など)に備え、権限や責任を明確化する。

3 経済合理性と法的合理性の視点

変革においては、次のポイントを検証します。

  • 外部依存の存在:外部コンサルタントや専門家への依存度が高いかどうかをチェックする。
  • 回避責任の排除:責任が社内で免除になり、外部に責任転嫁される事態を防ぐ。。
  • ジャッジ体制の構築:経営判断を行う権限範囲や意思決定のルールを明確にし、誤った判断があった場合には責任を明確にする。

4 事業戦略におけるバランス

事業運営においては、
「小さな成功(バントヒット)」

「大きな成果(ホームラン)」
の両立が課題となります。

  • :オーナー社長は両方の成果を出せるが、一般従業員はバントヒットすら困難な場合が多い。
  • 外部コンサルタントの限界:小さな成功の指導はできても、大きな成功のノウハウや経験を持たない。
  • 課題:バントヒットの経験のない従業員に、いきなりホームランを打てるのは現実的ではない。段階的な育成が必要。

5 まとめ

ルーティン業務に依存する組織から脱却し、イノベーションを進めるには、教育や体制整備、リスク管理をバランスよく進めることが大切です。

オーナー社長や経営陣が中心となり、変革に取り組む必要があります。

組織全体が巻き込まれる形で進むことが成功の鍵となるでしょう。

著:畑中鐵丸

00195_仕事のコミュニケーションの基本:トラブルを防ぐ、信頼を築く力

コミュニケーションが未熟だと、周囲から
「バイトクオリティ」
と見られ、信頼や評価を失うこともあります。

仕事に関しては、ただ話すだけではなく、相手に理解してもらえるような伝える力が求められます。

ここでは、よくある失敗例とその改善方法について考えてみましょう。

まず、
「証拠を残すべきでない話をメールでする」
という点。

このような軽率な行動は、相手に不信感を与えたりするだけでなく、後々トラブルを招きかねません。

仕事では、
「何を記録として残すべきか」
「何を口頭で伝えるべきか」
を正確に判断することが大切です。

これを身につけるには、周囲(先輩やトップ)の判断基準を観察することが重要です。

次に、
「謝罪」
の方法についてです。

形式的に
「すみません」
「ごめんなさい」
と謝ればいいいわけではありません。

謝罪の際には、被害を受けた相手の立場を想像し、具体的に何を謝罪するのか明確に伝え、そして改善策や再発防止策を示すことが信頼回復につながります。

また、文章力の重要性も失せません。

語彙が貧弱だったり、
「内容がよくわからない」
文章では、教養がないという印象を与えかねず、信用を損なう可能性があります。

これを改善するには、毎日から読書や執筆の習慣をつけ、表現力を磨くことが効果的です。

特にビジネス書や新聞のような、論理的かつ思考的な文章を読むことで、知覚力や文章構成力を磨けます。客観的に見直し、改善点を見つける訓練も必要です。

「伝える力」
は一朝一夕で身につくものではありませんが、地道に努力を積み重ねることで、確実に向上します。

最後に、
「伝える力」
だけでなく、
「相手の話をしっかり聞く姿勢」
も求められます。

日々の経験を糧にし、
「相手にされ、一目置かれる社会人」
を目指しましょう。

著:畑中鐵丸