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経済界連載「鐵丸弁護士直伝!勝ち組企業養成講座」

其ノ壱「提携交渉での騙し討ち」

今回の相談者

ナニワ信託銀行 取締役 梅田虎男(58歳)

相談内容

 先生、ちょっと聞いとくれやす。わてらナニワ信託銀行は、業界大手の東海信託銀行さんと「業務提携しまひょか」ゆうことになりましてな、先生が提示した覚書に署名して、2年くらいかけて、話し合いしとったんですわ。会計士さんやら入ってもろて、提携条件も詰まって、もうこれで決まりや、ゆうとこまできましたんや。
 忘れもしませんわ。大筋で条件が決まった昨年秋ごろでしたかいな。先方さんから急に「親会社の意向が変わったんで提携話はナシにしてくれ」と、こうゆうてきはりましたんや。しかも、噂によると、東海さんとこは、ウチの宿敵関東信託銀行さんと提携するという話ですわ。もうウチの会長カンカンで、「そんなん契約違反や。鐵丸先生とこに頼んで東海さんとこにヤキ入れてもろうて来い!」とこうなったわけですわ。先生、どうしたらいいかお知恵を拝借できまへんか。ほんま、よろしゅう頼んますわ。

其ノ弐「手形の取扱に注意」

今回の相談者

スーパーフリーダム社 社長  高田 馬場男(23歳)

相談内容

 こんちわ。どうもっす。オレ、今、学生なんすけど、イベント会社起業して、がんばってます。親父の会社が先生の顧問先つうことで、紹介したもらったっす。よろしっくっす。
 以前、カネ貸してやったコンパニオン派遣会社の社長がカネ返さねえんで、ちょっと後輩連れてボコりにいったら、「カネねえから代わりにこれで勘弁して」って手形を出してきたんすよ。なんかよくわかんないすけど、額面には1,000万円って書いてあって、ま、貸したカネが500万円だったし、「ラッキー。儲け」って思って、巻き上げといたんすよ。でも、これってよくわかんないじゃないすか。オレ、文学部だし。
 したら、この前クラブで開いたパーティーに来てた芸能事務所の社長ってゆうオッサンと意気投合して、手形のこと話したら、「オレにまかせろ、こういのは裏書ってのをすんだよ。あとは知り合いのヤクザに取り立てもらうから預けろ」とか言われたんで、とりあえず言われるがままに手形の裏んとこに署名して、そのオッサンに預けて安心してたんすよ。
 でも、オッサンから音沙汰ないしムカついてたら、昨日、突然、全然知らない会社の代理人だっていう弁護士から内容証明来て、「振出人は倒産しているから、裏書人であるスーパーフリーダム社が額面のカネを払え。払わなかったら、裁判起こす」とか書いてあるんすよね。オレもう、わけわかんなくて。どうしたらいいんすか。

其ノ参「国際取引を恐れるな」

今回の相談者

目蒲技研 会長 下丸子 カマ太(70歳)

相談内容

 いやー、先生、いつもお世話になっています。この間の労働組合の件では、ありがとうございました。
 で、今日の相談なんですが、実は、ご存じのとおり、当社は、いわゆるニッチ産業つうんですか、テレビのリモコンや携帯電話のボタンの製造に特化して長年やってきてまして、この辺りの特許については何件も取っていますし、この種のボタンに限っては市場シュアは世界的レベルなんです。
 昨年、携帯電話のボタンを押すときに、「北東の拳」っていう人気アニメの主人公の「アータタタタ」ていう叫び声と連動するようなシステムを作ったら、大人気になりました。
 このシステムは、実は、目の不自由な方向けのシステムとして、日本の他にアメリカと欧州の主要国に特許出願し、すでに公開されています。
 先日、アメリカの大手メーカーから、是非ともライセンスを受けたいという申出がありました。当社としては、人気商品であり、今後多数のオファーが来ることも考えられるので、有利な条件であれば、この契約をまとめたいのですが、私も社長をやらしている義理の息子も英語はからきしダメで、特許出願した弁理士さんから紹介された、「ドナルド・マイケル」っていう日本語が片言で話せるインチキ臭いコンサルタントの方にお願いして進めていました。ですが、どうも話合いが相手ペースでうまく丸め込まれているような気がして。マイケルさんは「ドンマイ、ドンマイ、ドンMichael」をくりかえすだけで、不安でたまりません。
 先生、どうしたら、いいでしょうか。

其ノ四「仲裁契約を活用せよ」

今回の相談者

医療法人社団大藪会 理事長 大藪 毒太(40歳)

相談内容

 先生、どうもどうも。この間の理事会ではオブザーバ参加いただき、いろいろご指導賜り、ありがとうございました。
 どうもウチの理事の医者連中って、どいつもこいつも世間知らずで商売センスゼロなもんで、先生に喝を入れていただかないとダメなんですよ。
 ところで、理事会後に行ったフレンチ、気に入っていただけました。東麻布にいいイタリアンみつけましたから、次回理事会後は、また、そこ行きましょうね。
 あ、そうそう。今日の相談なんですけどね。実は、最近、ウチの病院でちょっとした医療過誤がおきましてね。いやいや、たいしたことないですよ。水虫の患者にまちがえてプロペチア処方したら足の指に毛が生えてきた、ってそんなバカバカしい話なんですけどね。
 でも、「訴訟を提起して、公開法廷で、病院の医療管理態勢のいい加減さを洗いざらいぶちまけてやる!」なんて言うんですよ。さすがにこれには参りましてね。
 そりゃ、当病院も努力はしてますけど、どうしても漏れはある。その度に、公開法廷で恥をさらしていたら、こちらも信用商売ですから、商売あがったりですよ。
 ウチにもプライバシーってもんがあるわけですから、こういうの、なんとかできませんかね。

其ノ五「取引先が危なくなった」

今回の相談者

太平洋商事 社長 太平 洋(56歳)

相談内容

 先生、ご無沙汰しています。景気がよくなったせいか、ずいぶん当社も持ち直してきました。「今後は、海外展開を含めた前向きな相談を」と思っていた矢先だったんですが、今日は、ちょっと不景気な相談に乗ってください。
 実は、当社が二次卸となって、オフィス用事務機器を仕入れさせていただいています、グローバル物産さんという割と大手の一次問屋さんがあるのですが、「グローバル物産はどうやらヤバそうだ」という情報が入ってきたんです。
 いえ、私の友人のコンサルタントが、グローバル物産さんとお付き合いのある大手文具メーカーの社長さんとゴルフに行ったそうなんですが、その際、「グローバルから支払のリスケを要請されてなんどか応じているが、我慢の限界だ。大規模な手形のパクリ被害に遭い、不渡り回避のためにあの手この手を尽くしているらしいが、そろそろ縁を切ろうと思っている」ということを漏らしていたとのことなんです。
 当社は、当初信用がなかったもので、取引開始にあたって、保証金として1,000万円ほど差し入れていました。取引規模の拡大に伴い、保証金額は3,000万円ほどになっております。さらに、先月、実際はおそらく手形事故の処理のためだと思いますが、グローバル物産社長から倉庫設備の増強のための協力という名目で2,000万円の借金を求められ、これに応じてすでに支払いました。
 よく、「あぶない取引先とは付き合うな」なんていうじゃないですか。とはいえ、このまま手をこまねいてみておくわけだけにはいきませんし。どうしたらいいですか。