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経済界連載「鐵丸弁護士直伝!勝ち組企業養成講座」
其ノ弐拾壱「内部統制バブルに踊らされるな」
今回の相談者
株式会社ヒコマロン 社長 原義彦 (41歳)
相談内容
鐵丸先生、どーもー。いつもながら、お元気そうですねー。
こちらの方は、お蔭さまで、我が社が展開しております高級グルメ洋菓子チェーン「味の宝石箱」が絶好調でして、株式公開準備も佳境に入って参りました。
とはいえ、先日、監査法人の方が見えて、「内部統制しっかりしないと公開できないぞ」と厳しく言われたんです。J-SOXとかITガバナンスとかいろいろおっしゃっていたのですが、役員一同、「内部統制」という言葉は知っていますが詳細はさっぱりわかりません。でも、会計士の先生も知ったかぶりしているような感じで、どこか上滑りな感じの話でした。
適当に聞き流していたら、最後に、「特に、最近、飲食業に対する取引所の目は厳しいから真剣に取り組んでください」と言われ、コンサルティング会社やらシステム会社とかをご紹介いただきました。
ご紹介いただいたところに話を聞いたのですが、コンサルティング会社からは「お前の会社は、経理もいい加減で、文書管理もなっていない。年間5千万円のコンサルティング契約をしろ。しないと公開できないぞ」って脅され、システム会社からは「御社のIT環境は貧弱すぎます。当社の、J-SOX法対応の一式3億円のシステムをお買い上げいただいたら、もう安心。これで、御社も、IT革命や〜。」などと言われました。
よくわからないんですが、内部統制ってそんなに大変で、カネがかかるものなんですか。
数年前の個人情報保護法施行騒動のときには先生に「とりあえず、ウィルス対策ソフトとシュレッダー買って、従業員と出入業者から誓約書取っておけば十分。そのうち、こんなアホな騒動、すぐ鎮静化する」とアドバイスいただき、無駄な費用を使わずに済みました。
今回の内部統制についてはどのように対応したらいいのでしょうか。
其ノ弐拾弐「私製手形を活用せよ」
今回の相談者
株式会社岡村書店 店長 岡村孝(38歳)
相談内容
ご無沙汰しております。岡村書店、岡村孝です。いやー、また谷部にやられました。
当社が展開するグラビアアイドル写真集専門店「めちゃめちゃ問題!」の秋葉原5号店がこの間ようやくオープンさせていただいたんですわ。この店は、びっくりカメラ秋葉原店の7階ワンフロアを使って展開するということで、当社古参の店舗開発部長の谷部に仕切らせたんです。谷部は10年前に歌舞伎町風林会館前店の店長だった頃に、店の商品をヤクザに横流ししていた前歴のある奴なんですわ。当時は、「ヤクザに脅されまして、すんません」とか泣いて謝ってましたが、後から調べたらパクッた金の一部をホステスに貢いどったり、結構小狡い奴なんですわ。
とはいえ、仕事はようできるし、その後は改心して頑張ってましたから、店舗開発のトップに立たせてやったら、また、これですわ。調査したところによると、店舗設計とかいう名目で知人の会社に架空発注したり、写真集を横流ししたり、やりたい放題やっとったみたいで、損害は2千万円ほどです。
警察に突き出そうかと思ってますが、その前に損賠の話をきっちり詰めなあきません。
谷部自身はあまりカネを持っていませんが、親父は公務員で、それなりに収入はあるようですので、親父にも謝罪に来させます。ただ、谷部は妙に知恵があって、10年前のときにも公正証書を作成しようとしたら、公証役場に行くことはが頑として嫌がったくらいで、抵抗は予想されます。とはいえ株式公開も控えているので裁判してまで身内の恥をさらしたくありません。
鐵丸先生、なんかいい方法ありませんか。
其ノ弐拾参「敵対的TOBは一気呵成に!」
今回の相談者
株式会社プリンス製粉 社長 温味噌 洋一 (45歳)
相談内容
これはトップシークレットなんですが、この度、当社は、東証二部に公開している東北製粉を買収することにしました。
当社はかねてから設備増強と商圏の整理統合を考えていたのですが、現在の当業界における再編のスピードを考えると、チンタラやっている余裕はありません。
幸い、手元キャッシュとメインバンクからの借入とファンドからの資金提供もあって、過去3カ月の東北製粉の平均株価に20%ほどプレミアムを付けた価格で公開買付できる算段がつきました。
東北製粉は現状買収防衛策等一切整えていないようであり、敵対的な公開買付を実施しても、特段障害は見当たりません。
ただ、いよいよ敵対的TOB実施段階になって、今回買収アドバイザーを依頼したよこしま銀行から「乗っ取りをするとイメージが悪くなる。過去敵対的に公開買付をして成功したためしはない。TOBが可能な状況であることをブラフに用いて、東北製粉の経営陣と話し合い、彼らを説得して、友好的に進めてみるべきだ」という助言がありました。
とはいえ、東北製粉の経営陣は独立不羈の気風が顕著で、会社を我が物と考えているような節があります。プライドの高い経営陣が、「業界再編の中、共に生き残ろう」という当社の説得に応じてくれる可能性はゼロと思っていますが、アドバイザーの助言も気にかかるところです。
硬軟両策ありうるところですが、鐵丸先生のご意見はいかがでしょうか。
其ノ弐拾四「パクリ製品が出回った!」
今回の相談者
株式会社市原玩具 社長 小野米助 (58歳)
相談内容
先生、大変ですよ。パクられちゃいましたよ。
いえ、この前先生にもご紹介しました「突撃シャモジくん」のことなんですよ。
これは、ウチの常務、甥の米太朗のアイデアだったんですが、「ママゴトが好きな女の子とメカが好きな男の子の両方へのウケ狙い」ということで、ラジコンで動くシャモジ形ロボットを作ったんですよ。このことは以前紹介しましたが、当時先生から随分バカにされましたよね。ま、正直、私も絶対売れないと思ったんですが、昨年、冗談でシャモジくんの歌を作ってCMで流したら小学生の間でたちまち話題になり、商品バカ売れし続け、当社の数年ぶりのヒット商品になったんです。
そうしたところ、大手の玩具メーカーが、ものすごく似た商品を売り始めたんですよ。「隣のシャモジマン」とかなんとか言うらしいんです。ウチの商品は、木のシャモジをモチーフにしており、競合品はエンボス加工したプラスチックのシャモジをモチーフにしており、よくみれば違うといえば違いますが、明らかなパクリ製品。
実際、競合品のユーザーから当社のカスタマーサポートに何本も電話がかかってきたり、問屋さんから「隣のシャモジマン1000個至急納品されたし」なんて連絡来たり、当社は大混乱です。
大手食品メーカーの知的財産部出身の当社の総務部長は、「意匠登録していないから、裁判したってムリですよ」と、なんともつれない意見です。
これ、なんとかなりませんかね、先生。
其ノ弐拾五「飲食店買収の落とし穴」
今回の相談者
株式会社青木派遣センター 社長 青木小夜子 (38歳)
相談内容
先生、すごくいい話が舞い込んできたんですよ。ちょっと相談に乗ってください。
私、麻布とか青山とか銀座とかにイタリアンとかフレンチとかおしゃれな飲食店を持つのが東京に出てきたときからの夢だったんです。
ま、確かに今やっている派遣会社とは全く関係ありませんけど、この商売もそこそこ軌道に乗って小金も溜まってきたし、そろそろお店出そうかなあ、なんて思ってたんです。
とはいえ、今、都内はバブッてて、家賃は高いし、内装屋とかもいい気になってて高い値段ふっかけてくるし、大変なんですよ。というか、そもそも麻布とか青山とか銀座とかには、出店希望が殺到しているみたいで、物件自体が出て来ないんです。
そしたら、知り合いの波田不動産の波田社長からいい話が舞い込んできたんです。
話を聞くと、天現寺と乃木坂と築地の賃借店舗で味噌煮込みうどん屋を個人経営している知り合いがいて、引退するから三店まとめて売りに出してるっていうんです。
ま、麻布、青山、銀座という夢の立地からは微妙にずれていますし、味噌煮込みうどん屋というのもおしゃれとはいえませんが、この際、背に腹は変えられません。
波田社長からは「この買収案件は買手が殺到しているので、ホールドするにも限界がある。買う気なら、明後日まで代金1億円振り込んでくれ」って急かされています。
とりあえず、お金を用意して、明日にでも支払いしようと思うんですが、先生、買っちゃって問題ないですよね。