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経済界連載「鐵丸弁護士直伝!勝ち組企業養成講座」
其ノ参拾壱「M&A取引における売り手側は契約書を作るな」
今回の相談者
株式会社五十田珈琲 社長 五十田 紀里<いそだきり>(43歳)
相談内容
先生、聞いてください、ようやく、会社売却のめどが立ったんです。これで私もやっと好きな演劇の世界に戻れます。
先生もご存じのとおり、父に感動された後、劇団員として楽しい毎日を過ごしていたんですが、ある日、突然、父の会社を接ぐことになってしまいました。以来、右も左も分からず会社を切り盛りさせられ、過労死寸前の毎日でした。
会社経営なんて早く辞めたかったですし、どこか会社を買ってくれるところがあれば早く売り払って、好きな演劇だけして暮らしたいと思っていたところ、専務の叔父がコーヒー専門店のチェーン展開をしている取引先の社長と共同で、M&Aという形で事業を継承してくれることになりました。
契約も含めた細かい処理は、取引先社長の知人のコンサルタントの方が全部やってくれるみたいです。
税務的な確認も終わり、M&A資金の融資の準備も整ったということで、コンサルタントの方が契約書の案を送ってくださいました。
それがこれなんです。A4で2枚のこれです。恐らくコンサルタントの方が適当に書かれたものなんですが、素人目に見てもどうも言葉遣いが法律的でないような気がしますし、大体、契約書のボリュームが少ないのが気になります。
M&Aって言うと、ほら、フツー、もっとたくさんのページの契約書になるはずでしょ。こんなペラペラの契約書じゃ、なんか不安で。
先生のお力で、もっときちんとした契約書を作ってほしいんですよ。お願いできますか?
其ノ参拾弐「システムエンジニア派遣事業のリスク」
今回の相談者
今回の相談者 株式会社スッキリ・ソリューション 社長 佐藤 公次<さとうこうじ>(38歳)
相談内容
先生、おはようございます。当社は、銀行や証券会社に対して、クライアント企業内部のシステム開発要員としてシステム・エンジニアを派遣しております。ま、要するに、一匹狼のエンジニアに2次発注し、当社の名刺を持たせて、客先での開発に従事させるというわけです。
この種の仕事は波がありますので、当社としても、受託の見込みが不透明なまま、大量の要員を抱えるのはリスクです。
社会保険や有給休暇、さらには福利厚生の負担なんかしていたら商売あがったりですし。
ところで、先日、同業の会社に税務調査が入ったようなんです。その会社は当社と同じく、各エンジニアを独立事業者として取り扱い、外部請負のような形で契約をしていたようなんですが、各エンジニアが全く税務申告をしていなかったらしいんです。
社長は、各エンジニアが脱税しているだけで会社は特に問題がないと思っていたようなんですが、税務調査では、「各エンジニアとの契約実態は雇用だから、会社が源泉徴収税額を払え」と言われたそうなんです。
当社も事業実態は同じですし、各エンジニアは、税務申告などしたことない様子です。私としては、雇用という形での費用が固定化するリスクを避けたいのですが、他方で、エンジニアが税務申告をしないことが原因で、後ろから税務署からとばっちりを受けるのも御免被りたいところです。
何か、いい解決策ありますでしょうか。
其ノ参拾参「買収防衛策としてのチェンジ・オブ・コントロール条項」
今回の相談者
株式会社加藤茶業 社長 加藤英幸<かとうひでゆき>(64歳)
相談内容
当社は、有機栽培で有名な高木茶園と古くからお付き合いがあるほか、苦みと甘味を醸しだす製法は志村工業の特許の独占許諾を得ておりますが、これらの協力により独自の飲料商品を生み出し、ようやく株式を公開するまでになったのです。
ところで、先日、総務部長の仲本が、外資系のファンドが相当当社株を買い増しして、いつの間にか25%も買い占めていると慌てた様子で報告してきました。
このことを高木さんや志村さんに相談したところ、「オレたちは加藤さんと一緒に加藤茶業を大きくしてきた。買収されるようなことがあったら、オレたちも困る。何でも協力する」と言ってくれています。
とはいえ、2人とも安定株主として株を買い増すという形での協力は無理なようです。
ところで、高木茶園との茶葉の仕入れ契約は今月で修了となり、更新の話となりますし、志村工業との特許ライセンス契約も来月に一端修了となります。ファンドは純投資目的で保有しているようですが、米国大手メーカーが当社を買収する動きがあるとの噂もあり、ファンドがこのような動きに併せて買い増しをしているとも考えられます。敵対的買収を防ぐための妙案で、何かいいものはありませんでしょうか。
其ノ参拾四「株券がホニャララ団の手に渡ってしまう!」
今回の相談者
株式会社海砂利リゾート 社長 有田 哲也<ありたてつや>(36歳)
相談内容
先生、大変なことになりました。
高校の同級生で、創業直後から一緒に頑張ってきた専務の上田がやらかしてくれたんですよ。
いえ、どうも前から上田の様子がおかしいなと思っていたんですが、上田の無断欠勤が続くのでいろいろと調べてみると、奴はえらい借金があるようで、それも相当あぶない筋から借りていたとのことなんです。上田には当社株式10%に相当する株式を持たせていましたが、当社の他の発行済株式と同様、現在のところは、株券は発行しておりません。
ところが、先日、ホニャララ団とおぼしき人物から、当社の総務部に電話があり、「オレは上田にカネ貸してんだけどよ。あんまり返さねえんで、上田の持ってる株式を質に入れさせたんだよ。でさ、オレもさ、質入れしてもらった以上、おたくの株券を持っときたいわけ。上田宛に株券発行してやってくんねえかな」とかいう連絡がありました。
当社はまだ株式公開に至っておりませんので、定款上株式譲渡制限を付けております。しかしながら、再来年には株式公開予定であり、現状で素性の芳しくない方が株主として入ってきてもらうと困るのです。
当社の監査役の会計士の先生は、「会社法上株券を発行する義務があるので、請求されたら株券を発行せざるを得ない」との意見ですが、株式公開を見てもらっている証券会社の方は「株券が変な方の手に渡るならまず株式公開は無理」と言っています。
ほんと、大変な状況です。
どうすればいいのでしょうか。何かいい方法があればぜひ教えてください。
其ノ参拾五「ベンチャーキャピタルから株主代表訴訟を提起すると通告された!」
今回の相談者
株式会社バブルネット 社長 大芝透<おおしばとおる>(53歳)
相談内容
先生さあ、ちょっとさあ、大変なんだけどさあ、聞いてくれるかなあ。
うちってさあ、カネが足んなかったもんでさあ、メーンバンクの支店長さんから紹介を受けたベンチャーキャピタリストの小堺ってのに「トゥギャザーしようぜ!!」ってお願いして、出資してもらったわけさ。でさ、小堺が取締役会に出席するようになったんだけど、こいつがとんでもない奴でさ。数字は読めない、ベンチャービジネスはわかんない、英語はできない、ITに至ってはEメールすら使えない、大馬鹿だったわけさ。
この間の取締役会で、小堺があんまりアホな意見ばかり言うもんだから、こっちもキレちゃって、最後に「シャラップ!バカはひっこんでろ」って言ってやったわけさ。
小堺の野郎、顔を真っ赤にして、何を言い出すかと思ったら、「当社は御社の株主ですよ。そんな口聞いていいんですか。わかりました。御社の財務資料を徹底的に洗い直して、代表訴訟を提起します」なんて言って帰りやがった。
野郎、当社の取引先の中にオレのダディが経営している会社が入っていることとか、司法書士業務とか社労士業務をオレのワイフのブラザーに発注していることとか、いろいろ嗅ぎ回っているらしい。
ま、どうせロクなことを言ってこないと思うけどさ、株主代表訴訟なんてのがよくわかんないもんでさ、なんか対抗策とかあればさ、先生からアドヴァイスほしいわけさ。
というわけでさ、ティーチ・ミー、プリーズ!